「自分の人生を歩んでいない…」一度はあきらめた家業の道 和紙の技術で自動車部品、業界シェアトップ企業の「三男」の苦悩
◆再び家業の道へ、「当事者意識」を携えて
――事業承継を一度断念してから、2020年にセキネシール工業に入社するまでにどのような心境の変化があったのでしょうか。 転職して半年後に、母親が重い病気を患ってしまったのです。 そのときに「自分が会社を継ぐのが、親孝行になるのかな」と思うようになりました。 しかし、また責任感だけで決断することはやめようとも考えました。 そこでふと気付いたのは、私は「後継者」について、何も知らないということでした。 2018年頃からは採用支援会社で働きながら、個人的に後継者のビジネススクールに通い、後継者の話を積極的に聞くことを繰り返しました。 出会った後継者の方々の共通点は、「楽しそうに働いている」ということ。 「圧倒的な当事者意識を持って、自分の人生を歩んでいる」と感じました。 そこからは私自身も、同じような後継者になりたいと思えるようになっていきました。 ――他の後継者との出会いが、大きな転機になったのですね。 そうですね。例えば栃木にある鶏卵販売会社の後継者さんは、自分で養鶏も始めて、自社の卵をレストランやケーキ屋で商品化したりするような新規事業にも挑戦されていました。 自分でも「当事者意識」を持って、経営という仕事をしていきたい。 そう考えて、2020年1月に「自分が将来の後継者だ」という意識を持った上で、セキネシール工業に入社したんです。
■プロフィール
セキネシール工業株式会社 代表取締役社長 関根俊直氏 1988年7月、埼玉県比企郡小川町生まれ。2011年に中央大学商学部を卒業後、アイシン精機株式会社(現在の株式会社アイシン)に入社。2016年1月に株式会社ビズリーチに転職し、営業や社内人事の仕事に携わる。2020年1月、セキネシール工業株式会社に入社し、営業、人事、社内のDX推進を担当し、2024年1月より現職。
取材・文/庄子洋行