「世界のライブミュージックの首都」どの会場から行ってみる?【オースティン音楽旅行記Vol.2】
その他の主要ヴェニュー
Moody Centerは同市最大規模となる15000人収容の多目的アリーナ。2022年にオープンしたばかりで、同年にはハリー・スタイルズが一挙6公演を行なった。 観光名所でもあるテキサス州議事堂からすぐ近く。ウォータールー公園の景観に溶け込むオープンエアな円形劇場、Moody Amphitheaterは5000人収容。ヴァンパイア・ウィークエンドが2024年4月、ここで皆既日食に合わせて最新作のお披露目ライブを開催している。 1700人キャパの中堅ライブハウス、Emo’sは2023年にザ・キラーズがサプライズ出演したことでも話題に。この街随一のジャズクラブElephant Room、アフリカ音楽のDJや生演奏を楽しめるSahara Loungeも気になるところ。他にもライブを楽しめる場所はたくさんあるわけだから、質・量ともに凄まじい充実ぶりだ。 ※South Congress地区のヴェニュー(The Continental Clubなど)は本連載Vol.3、ACL Live at The Moody TheaterはVol.4で詳しく紹介
South Lamar:映画館と味わい深い歌心
予習を済ませたところでライブハウス巡りの旅へ。その前に、最初の目的地であるオースティン南部のSouth Lamar大通りで少し寄り道をした。 リチャード・リンクレイター、テレンス・マリック、ウェス・アンダーソンといった名監督とも縁の深いオースティンは映画産業も盛んだ。全米40館以上を誇る映画館チェーン、Alamo Drafthouseはこの街で1997年に開業した。新作も古い名画も並ぶプログラムに加えて、上映中においしい料理を楽しむことができるのも売りの一つ。 筆者が覗いたときは、ちょうど全米最大級のジャンル映画祭、ファンタスティック・フェストの真っ最中。館内は多くの観客や関係者で混み合っていた。映画館のすぐ隣にカナビス専門店があるのはさすがヒッピーの街だ。 この付近はローカル料理のOdd Duck、テックス・メックスのMaudie’s Too、寿司やラーメンなどレストランの宝庫。日中は暑かったので、家族経営の手作りパイ屋さんTiny PiesでPie Freezeを注文してみた。自家製パイフレーバーとバニラカスタードを混ぜ合わせた冷たいシェイクは絶品だ。 South Lamar大通りを南下するにつれ、アメリカらしい郊外色が強まっていく。そして映画館から徒歩6分、お目当てのSaxon Pubに到着した。この街ではCactus Cafeと並ぶアコースティック寄りの名店で、ウィリー・ネルソンなどの大物も含めて、30年以上の歴史で3万回ものライブが行われてきたという。筆者の友人である若林恵さんから、WIRED編集長時代にSXSWでここを訪れた際、優秀なシンガーソングライターが揃い踏みだったと聞いて気になっていたのだ。 筆者が観たクラウディア・ギブソンは、ケルト音楽のエッセンスも感じるフォーキーな声と楽曲の持ち主で、その腕前から地元シーンの豊かさも実感できた。150人キャパの親密な空間で、バーカウンターもあるが騒ぐノリではなく、みんな椅子に座って静かに聴き入っている。 ちなみに、Saxon Pubのすぐ脇には「South Austin Music」という筋金入りのギターショップがある。パフォーマー/観客が楽器を手に取る環境まで整っているのは音楽の街ならではだ。 ここから大通りを3km近く下ったところにあるBroken Spokeもオースティンの人気店だ。2024年で開業60周年を迎えたホンキートンク(カントリーを演奏するバー)の老舗。『クィア・アイ』のシーズン6「ブロークン・スポークの決闘」のなかで描かれているように、ペアで踊るテキサス・ツーステップのレッスンを受講することもできる。