7000人診察して見えた、どんな会社にも「職場を腐らせる人」がいるという「残酷な現実」
ときにはやり返すことも必要
恐ろしいことに、職場を腐らせる人は、ターゲットが抵抗も反撃もしないのは、弱くて、恐怖を抱いているからだと受け止め、相手の平和主義や無抵抗の上にあぐらをかいて、平気で傷つけたり痛めつけたりする。 そこで、ときには、やり返せるんだぞと見せつけることが必要になる。うまく避けることができず、黙ったまま耐えているうちに、「反撃しなかったら、あいつに自分の人生をめちゃくちゃにされてしまう」とか「このままでは、自分がボロボロに壊されてしまう」とか思い知らされたようなときは、そうするしかない。 問題は、やり方である。あまりにも攻撃的な手法だと、仕返しされるかもしれないし、周囲の反感を買うかもしれない。かといって、穏便な手法では、職場を腐らせる人に歯止めをかけられないだろう。 そこでお勧めするのが、ユーモアのセンスを発揮して黙らせる手法である。できれば、職場の仲間の見ている前で。 「ユーモアは人類の最高の宝物だ」という名言を残したのは、『トム・ソーヤーの冒険』で有名なアメリカの作家、マーク・トウェインだが、たしかにユーモアによって気分が軽くなり、深刻な事態に対処できるようになることは少なくない。だから、これを使わない手はない。 たとえば、営業職の男性は、朝礼の際にコスト意識を持つようにうるさく言う上司からターゲットにされ、毎回経費がかかりすぎだと名指しで非難されていた。そのせいで、毎朝胃が痛くなっていたし、ちょうど大きな契約が取れて自信がついたところだったこともあって、ある日、 「コスト、コストとおっしゃいますが、そのために社員が畏縮して、モチベーションが下がってしまったら、そのほうがコストが高くつくんじゃないですか」 と言ってみた。 上司は唖然とし、周囲はどっと笑った。もちろん、ただではすまなかった。この男性は僻地の営業所に飛ばされた。それでも、そこで業績をぐんと伸ばして、数年後に本社の管理職として返り咲いたという。 こういう手法には誰だって頼りたくないし、誰にでもできるわけではない。ただ、そうせざるを得ない場合もある。職場を腐らせる人に気に入られなくてもいい、場合によっては嫌われてもいいくらいの相当な覚悟が要る。その覚悟を持つためには、職場を腐らせる人に依存しなくてもやっていけるだけの力をつけておくことが必要なのは、いうまでもない。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
片田 珠美(精神科医)