裁判所も「後見は必要ない」と厳しく批判!なぜ港区は父を連れ去り、入院先を隠していたのか
ようやく入院先が判明、そこでも港区が…
やがて戸田さんは、都内の高齢者施設や病院に片っ端から電話をかけることにした。 かけた電話の数が100件に近づいた頃だろうか。埼玉県川口市の精神科病院に父が入院させられていることがわかった。父との面会許可が出たのは2023年7月。弁護士を伴って病院に行くと、またもや港区の職員が立ちはだかった。 「病院に行ったとき、弁護士との面会に港区の職員が勝手に同席しようとしてきたんです。弁護士が強く拒否したために同席を断念しましたが、港区の職員は帰ろうともせず、病院にずっと残っていました。父との面会を終えた弁護士からは『お父さんは娘と会いたいと言っています。認知症でも精神障害者でもない。なぜ、この病院にいるのかわからない』との報告がありました。それで、最後は警察を呼んで、即日退院しました」 成年後見制度では、地方自治体の首長が代理で制度の利用を申し立てることもできる。 後にわかったことだが、港区が父の後見人として推薦した弁護士は、父が所有するマンションを売却する計画を立てていた。成年後見人は、被後見人の財産を売却すると、売却金額に応じた報酬を受け取ることができる。さらに、父親の住民票を千代田区霞が関にある弁護士の事務所に移したいとの上申書も東京家裁に提出していた。これは、家族が居場所を追跡できないようにするためだったと思われる。 戸田さんはその後、関係者の支援を受け、父の“奪還”に成功した。 「もしも、父親の居場所を見つけることができなかったら、父に後見が必要な状態でなかったという事実は、藪の中に葬られ、私たち親子は一生会えなかったと思います。この冷酷な仕打ちが、港区の保健福祉行政の『支援』なんでしょうか」 一連の経緯について港区は「個人情報については答えられない」としたうえで、「区は、ご本人の権利が尊重されるよう安全・安心を第一に必要な支援を今後も行ってまいります」と取材に回答している。 それにしても、なぜ、行政が高齢者を連れ去るという事件が港区で立て続けに起きたのか。それは、果たして港区だけの出来事なのか。 スローニュースでは、今回発覚した事件も含め、“行政による高齢者の連れ去り”問題を詳しく報じている。
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