政府から3600億円の要求!?…念願の「社長」になった直後に葛西敬之が直面したヤバすぎる「債務問題」
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第37回 『「目的のためには手段を選ばない」…日本財界の黒幕・葛西敬之が用いた、「火砕流」と呼ばれ恐れられる強引なやり口』より続く
経営の第二ステージへ
そうして本州3社はJR東日本の93年10月を皮切りに、96年10月にJR西日本、最後が97年10月のJR東海という順で株式を上場した。この間の95年6月、葛西は念願の代表取締役社長に昇りつめ、名実ともにJR東海の経営を牽引していく。JR東海が株式上場を果たした1年後、長期債務とともに各駅の車両倉庫など莫大な資産を国鉄から継承した国鉄清算事業団が解散する。JR各社は株式上場と清算事業団の解散を経て、経営の第二ステージへ向かった。 この清算事業団の解散に伴い、旧国鉄職員の年金債務問題が持ち上がる。国鉄が分割民営化されたあと、鉄道共済年金が厚生年金に統合され、政府・運輸省が国鉄清算事業団の抱える国鉄職員の3600億円の積み立て不足をJR各社に追加負担するよう求めた一件である。黒野が解説する。 「これも国鉄の長期債務処理の一つです。年金の積み立て不足分をJR各社で負担してほしいという議論で、もともと国鉄の長期債務は清算事業団が私有するJR株や優良な土地を売って返済するフレームでした。ところが、バブル期に土地や株が高騰したので、それらを売らなかったのです。国鉄の優良な土地が地価高騰を招くというのが当時の国土庁の主張で、われわれ運輸省は国鉄の遊休地をどんどん売れば地価は下がるんじゃないか、と大激論になりました。当時は政府としても土地の値段を上げないことのほうが優先課題だったものですから、土地を売ることにものすごいブレーキがかかったといえます」