米で相次ぐ警官の黒人射殺 クリントン候補が問題視 州最高裁判決にも注目
26日にニューヨークで行われた大統領候補者による討論会では、民主党のクリントン候補がアメリカの社会問題の一つとして、警察官による過度な力の行使について言及。クリントン候補は、市民と警察の関係が断絶された状態にあると語った。クリントン候補の主張を証明するかのように、アメリカでは警察官による射殺事件が後を絶たない。 【写真】年間1000人が警官に殺される米国 「銃を持つ権利」と市民と警察の間の溝 9月後半、アメリカの2つの都市で、丸腰の黒人が射殺される事件が発生。車内で本を読んでいたとされる黒人男性が車から降りてきて間もなく射殺された様子はビデオでも撮影されており、証拠品のビデオを公開しない警察の姿勢や、発砲した警察官が罰せられることもなく有給を消化することに市民は憤り、シャーロット市内では4日にわたって警察への抗議集会が行われた。このような事件、そして抗議デモはアメリカでは決して珍しくない。数か月に一度の割合で発生するこのような事件に、何か対処する方法はないのだろうか?
今度はタルサとシャーロットで発生
丸腰の黒人が警察官に射殺され、それが原因となって大規模なデモが発生するという光景はこの数年のアメリカでは決して珍しい話ではなくなった。2014年夏に中西部ミズーリー州のファーガソンで発生した大規模なデモは、連日その様子がアメリカ国内外のメディアによって伝えられ、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」と称する市民運動は全米に拡大した。南部ルイジアナ州のバトン・ルージュで行われた、警察暴力に対する市民のデモが大きく報じられたのはわずか2か月前の話だ。 9月後半にノースカロライナ州シャーロットとオクラホマ州タルサで発生した、警察官による黒人射殺事件は、この数年でよく見られるように、射殺の一部始終が警察車両に搭載されたドライブレコーダーや、周辺の目撃者によってスマートフォンで撮影され、多くの人に拡散されたこともあって、警察に対する不信感はこれまで以上に増大している。 ノースカロライナ州シャーロットで発生した事件は、市内で警察に対する抗議デモへと発展し、少なくとも23人の警察官が負傷し、デモ参加者も9人が負傷。デモに参加していた黒人男性が射殺されている。当初、デモを鎮圧しようとした警察がこの男性を射殺した可能性があると報じた米メディアもあったが、地元警察は前科のある地元の黒人男性を殺人容疑で逮捕している。20日から23日までの4日間にわたってシャーロット市内で続いたデモ。そのきっかけとなった事件とはどういうものであったか、ここで振り返っておく。 事件は20日午後4時頃に発生した。逮捕状を持って容疑者の拘束に向かっていた警察官らは、目的地の近くにある駐車場で、銃を手にした黒人男性が車から出てきて、またその車に戻る様子を確認(警察側の発表)。停車中の車に乗る黒人男性を取り囲み、車から出るように命令した。黒人男性は車から降りたが、両手を上げずに移動しようとして、銃を向けていた私服警官によって射殺された。4発の銃弾を受けた42歳のキース・ラモント・スコットさんは警察が追っていた容疑者とは別の人物で、駐車場のあるアパートで妻と子供と一緒に暮らしていた。スコットさんを射殺したのは、2014年から地元警察で勤務する黒人の警察官だった。事件の一部始終は、警察官が身に着けていたボディカメラと、パトカーのドライブレコーダー、そして近くにいたスコットさんの妻の携帯電話によって撮影されていた。 地元紙のシャーロット・オブザーバーによると、スコットさんは過去に事故によって脳に損傷を受けており、それ以来コミュニケーションをとるのが困難になったのだという。スコットさんのスマートフォンで撮影した動画では、警察官に囲まれたスコットさんに対して、「警察の指示に従って!」と叫ぶ妻の声も入っているが、同時に警察官に対しても「彼は銃を持っていません。TBI(外傷性脳損傷)のために、薬を服用しているんです」と状況を説明する様子が確認できる。 妻がスコットさんのもとに駆け付ける直前に、発砲は行われ、スコットさんは死亡した。車内で本を読んでいたと主張する遺族に対し、シャーロット警察は車内から本などは発見されなかったと発表し、スコットさんが銃を所持していた可能性を示唆したが、銃の有無に関しては現在までに明確になっていない。また、現場にいた4人の警察官のうち、3人はボディカメラを着用していたが、実際に発砲した警察官だけがボディカメラを着けていなかった。シャーロット警察は警察官の1人が着用していたボディカメラの映像を公開したが、発砲直前までの音声はカットされていた。