M-1決勝で話題の双子漫才師・ダイタクが「M-1に全振りなんてできなかった」ワケ
大 すごく難しい存在なんですよね。だって漫才師がM-1に出なかったら絶対「逃げた」って言われるんですよ。強い信念を持って「出ない」って決めてもね。だから嫌でも出るしかないし、出るんだったら勝ちたいし、みたいな複雑な心境でしたよ。 で、みんなM- 1のために1年間ネタ作ってきて、2回戦とか3回戦で落ちて本当に絶望的な顔してますからね。「1年間が無駄だった」って。僕らはそこまではできなかった。M-1に全振りして、どんな現場でもM-1のためのネタばっかりやって、みたいな方向には舵は切れなくて。それよりも、まず目の前におるお客さんに楽しんでもらって、会社にも評価してもらって、いろんな劇場に呼んでもらって 。そういうことこそやらないとダメだなと思ったんですよね。 ――むしろそうした方が決勝に行けた、と。 拓 全力を注ぐってめちゃくちゃリスキーなんですよ。例えば同じラストイヤーだったトットさんは本当にすごく努力してて、M-1に全力を注いでいて。僕らはそれはできなかった。 「全力で走り抜けたらもう悔いはないよ」とか言うんですけど、結局ファイナリストに行っても優勝しなきゃ絶対悔いは残るし、全力なんて僕らの性格的にも芸風にも合ってないんです。 だって、『鳥人間コンテスト』に1年かけて出て、すぐに真っ逆さまに落ちる。それを毎年15年続けるわけですよ。そんなことできない。『SASUKE』の山田勝己さんみたいに自宅に同じセットを作って毎日トレーニングしてるレベルのやつらがいるのに。 ――お笑いは特に、そういう人が落ちて、そうじゃない人が優勝する可能性もありますしね。 大 おいでやすこがさんなんて、元は即席のユニットだけど、それが決勝まで行くっていうこともありますからね。もちろんおふたりとも努力されてますけど、何年間も努力し続けたからと言って行けるものでもない。だったらあとはもう、自分たちがM-1とどうやって向き合うか、しかない。で、これで努力しないで行けなかったら、「あいつら努力しなかったもんな」って言われてもしょうがないし。 拓 M-1一本にシフトするのもリスクがあるし、シフトしないのもリスクがある。ただ、吉本のいいところは、劇場がいっぱいあるし、そういう劇場での頑張りとか、M-1の結果以外のところでも評価してくれる人がたくさんいるんですよ。そういった意味では、そういう人たちのためにも劇場も頑張らないとって思ってましたね。 結局全部結果なんですよ。決勝行けたのもたまたまだし、準決勝に残ったコンビは誰が決勝行ったっておかしくないですもん。ラストイヤーで、6回目の準決勝に挑戦でとか、そういうちょっとエモい部分で評価してもらった部分もきっとあるし。 ■どうせ売れるんだったら楽しんで売れたいし、売れないんだったら楽しみたいし ――ダイタクさんって、例えばニューヨークさんとかオズワルドさんとかいろんな後輩芸人から話題が出て、面倒見の良さを感じるんですけど、逆にご自身がお世話になった先輩は誰ですか?