M-1決勝で話題の双子漫才師・ダイタクが「M-1に全振りなんてできなかった」ワケ
拓 結構いろんな人に言われるんですけど、過去のいいネタは僕らの中では鮮度がだいぶ落ちてるんで、流行り廃りはないんですけど、過去のネタはちょっと飽きてる部分はあるんです。いいネタだけど、もう言葉に魂が乗らないネタがたくさんあるんですよ。だからもう、過去のいいネタを決勝でやろうっていう感覚ではないですね。やっぱり新しい方が言葉に力が乗るし、それで初めて決勝まで行かしてもらったネタなので。 だから決勝の1本目ではそのネタをやって、2本目ではもうちょっと深いネタ、好きなことをやってるネタをやろうかなって思ってます。 大 そうそう、1本目はみんなが分かりやすくて、ちょっと自己紹介みたいなネタ。で、2本目で深いところまで見せられるネタにしようと思ってますね。 ■M-1に全振りなんてできなかった ――自分たちがネタを分かりやすくする一方で、お客さんや視聴者のレベルが今のダイタクに追い付いてきた可能性もありますよね。 大 そうですね。変な話、近年のM-1のネタは、お客さんも審査員の方も「こんなの評価できるのかな」っていう思いもありました。去年準決勝でやったのは「2段ベッド」っていうネタなんですけど、ただ僕らが高校2年生まで2段ベッドを使ってたっていうだけのネタなんですよ。そんなのみんなどうやって評価するんだろうなと思って。 ――なるほど。2人にしてみれば当たり前の生活の延長なわけですよね。 拓 だから「そこを笑いにしよう」と。要するに、「双子でもこんなところをつっついてくるんだ、コイツら」みたいなネタが評価されると思っていて、一方でこんなの評価できるのか?っていう気持ちもあって。 大 だから今年は本当に自分たちの中でも「こんな分かりやすくて大丈夫か?」って思いながらやった感じです。お客さんたちが追い付いたというよりも、僕らが1歩引き下がったって感じになるのかな。M-1に狙って合わせに行ったっていうよりも、たまたま合ったって感じですかね。 ――そういうものなんですね。 拓 もちろん賞レースを狙ってネタを作ってる人もたくさんいますよ。でも僕らはそうじゃなく、いいネタが出来たらそれをM-1に持って行くっていうパターンでずっとやってきて、今回たまたまマッチングしたっていうだけ。しかもそれがたまたまラストイヤーだったっていう、そういうたまたまが重なったかなっていう。 大 ただ、いろんな人に「もうちょっと漫才の分かりやすさのレベルを落とした方がいい」とは言われてたんですよね。伝わる人は絶対伝わって、そこだけにはめちゃくちゃすごいねって言われるけど、そうじゃない人もいっぱいいる。だから、深い笑いばかり求めずに、もっと浅いところがあってもいいみたいなことは結構言われてました。 でも、今回準決勝でキュウのぴろに「準決勝でやるネタ決めてるんですか?」って聞かれた時、「あのネタやろうと思ってるんだけど、なんかまだ自分の中でしっくり来てないんだよね」って言ったら、「あ、それいいですよ」「それ行くやつですよ」って言ってたんですよね。「僕も決勝行った時のネタ、全然好きなネタじゃないんですよ」とか。 ビスケットブラザーズも「(キングオブコントの)決勝で優勝したネタは、自分たちで全くやるつもりなかったけど、周りから『なんであれやらないの。絶対あれだよ』とか言われて、しぶしぶ準決勝でやったら決勝行けちゃって。そのまま優勝しちゃって」みたいなことを言ってて。 そうやって、自分たちでは俯瞰で見られてなかった部分があったんでしょうね。だから僕らはたぶん、ここまで来るのに時間がかかったんだと思います。M-1と向き合いきれてなかったというか、少し逃げてた面もあったと思うんですよね。 ――M-1っていう目標があるっていうのは良かったですか? それともあったらあったで面倒臭い存在だったのか。