「STAP現象」再現できず「不正疑惑」はいまだ闇の中 科学への信頼回復が不可欠
「再現実験」で疑惑を晴らすことはできない
会見の前日、産経新聞が「科学者の多くが細胞の存在を疑問視する中、実験で自ら汚名返上を目指したが、疑惑を晴らすことはできなかった」と書いたのですが、厳密にいえば、この記述は間違っています。 気をつけなければいけないのは、理研のいう「検証実験」で確認できるのは「再現性の有無」だけで、「不正の有無」はわからないということです。不正がまったくない研究でも、第三者による実験で再現性が得られないケースはそれほど珍しくありません。その場合、研究者本人は学問的な批判は受けますが、社会的制裁の対象にはなりません。
しかし、不正は懲戒免職などの対象になりうるものです。今回の結果では、再現性が「無」いと確認されただけで不正があったのかなかったのか、あったとしたらどのようなものなのか、といったことは何ひとつ明らかになっていないのです。「不正の有無」を調べるためには、本人や関係者からの聞き取り、残された資料・試料の検証などを徹底的に行うしかありません。「実験」で「疑惑」を晴らすことはできないのです。 「再現性の有無」と「不正の有無」、どちらを優先すべきでしょうか? 理研は前者を先にはっきりさせたわけですが、もし後者を先にはっきりさせておけば、その結果次第では、そもそも検証実験≒再現実験など必要なかったかもしれません。なおこの検証実験では、予定の1300万円を超える1500万円の予算が使われたことが会見で明らかにされました。 理研は現在、「不正の有無」やその内実について、外部の委員からなる「調査委員会」による調査を実施中だといいます。再発を防ぎ、理研の、いや科学への信頼を回復させるためには、世間の関心が低くなる前に、“不正の有無の検証”を終える必要があります。 (粥川準二/サイエンスライター)