配当再投資7兆円の行方、受け皿はバリュー株か-物言う株主も後押し
(ブルームバーグ): 日本のバリュー(割安)株は今年、4年連続で日本株全体をアウトパフォームする勢いだ。年末に向けては数兆円規模と目される配当金の再投資が新たな追い風になるとの見方がある。
フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドによると、アクティブファンドや個人投資家の手元には年末にかけて約7兆円の資金が入る。毎年11、12月に3月期決算企業が株主に支払う中間配当の一部で、増沢氏は再投資を通じて日本株相場を押し上げる可能性があるとみている。
同氏の試算では今期の中間配当は総額約8兆円に上り、このうち今週だけで5兆6000億円が株主に渡るという。
東京証券取引所による資本効率の改善要請を受け、上場企業は増配や自社株買いを積極化している。東証株価指数(TOPIX)の1株当たり配当は少なくとも2005年以来の高水準で、今年の自社株買いは過去最高が確実視される。年末は株式相場が上昇しやすいという経験則を後押しする形で、日本株が騰勢を強めることへの期待を高めている。
三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、配当金の再投資が向かうのは、高配当銘柄のほか、株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回る「金融や商社といったバリュー株」だと話す。割安に放置されている企業が東証の要請に応じて資本コストに関する取り組みの開示を進め、株価が好調に推移することを先取りした買いが入りやすいとの見立てだ。
金利上昇を受けた金融株高が一因となり、24年のバリュー株はTOPIXを上回るパフォーマンスを記録している。3日時点で年初来の上昇率はTOPIXバリュー指数の21%に対し、TOPIXグロース指数は12%、TOPIXは16%。12カ月先の予想配当利回りはMSCIジャパン・バリュー株指数が3.4%で、MSCIジャパン・グロース株指数の1.6%を上回る。
足元の株価が好調なバリュー株の一例が九州フィナンシャルグループだ。同社は11月5日、今期(25年3月期)の年間配当予想を1株18円から20円に引き上げると発表。株価は発表前の11月1日から12月3日までで9.3%高と、TOPIXの4.1%高を大きくアウトパフォームしている。