「もう外に出るのも嫌」海外生活に耐えられず、日本にとんぼ返りする人も…期待に胸膨らませた若者が直面する〈理想と現実〉のギャップ
海外生活への期待と現実
ワールドアベニュー社長の松久保さんは、合わない事態が起こらないためにも、期待値を上げすぎないように気をつけていると語っていた。慣れない海外生活で、何もかもバラ色のはずがない。 松久保さんは言う。 「期待が裏切られるフェーズって、必ずあるんです。想像していたのと違う、と。ホームステイ先がもっと歓迎してくれると思ったのに違った、とか、オーストラリアは水不足の国なのでシャワーの時間に厳しく、うるさく言われて驚いた、とか。自分の常識とのギャップを学んでほしいのですが、期待値が高すぎるとストレスになる。ですから、現実をちゃんと伝えること、それからフォローも意識していますね」 とりわけ当初3か月はストレスが高まる。だが、それを過ぎると変わっていくようだ。染野さんは言う。 「不安、不安と言っていた人ほど、いざ海外に出てみると、ほとんど連絡をくれなかったりします(笑)。まったく日本に帰ってこなくなったり」 染野さんが注意しているのは、出発前にネガティブな空気にならないようにすることだと語る。 「とても残念なことなんですが、『ワーホリくらいで英語ができるようになるわけない』などと、まわりでネガティブなことを言う人が少なくなかったりするんです」 だから、できるようになるんだ、というマインドセットをしっかり行うという。実際、ほとんどの人が程度の差こそあれ、できるようになるのだ。武政さんも言う。 「泣き言が出てくるのは、最初だけですね。あとは案外、こちらに連絡すら来なくなります(笑)。楽しんでおられるのだと思います」 経験したことがない状況に追い込まれれば、人はストレスを感じる。しかし、それは裏を返せば、いつもと違うドキドキとワクワクの日々であることも意味する。 さて、どちらが楽しいか。そのことに気づかせてくれるのが、海外なのだ。 上阪 徹 ブックライター ※本記事は『安いニッポンからワーホリ!最低自給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
上阪 徹