【目指せトップレーサー】いつかはボート界の〝ケン・ワタナベ〟へ東都期待の渡辺健が奮闘中
思わず出走表を二度見した。10月末に大村ボートで開催されたルーキーシリーズ第17戦5日目6Rで展示は枠なりスロー3コースだった渡辺が、本番は一転して3カドに引いた瞬間だ。F2の選手が期末まで残り2日となった中、しかも〝敗者戦〟での驚きの〝作戦行動〟だった。 「結局、(コンマ26と)スタートがいけずに5着でしたが、2日目(8R)は4カドからまくれたので、それで、もう一回、チャンレンジしました」 時期と状況を考えれば、リスクが高くリターンが少ない奇策だが、一方で〝白旗〟を上げずにファイティングポーズを取る姿勢はプロ向きともいえる。 前期(5月から10月)勝率は3・34。6月の津、7月の江戸川での2本のフライングが響いて、自己最高をマークした前々期(昨年11月から4月)の5・08から大きく勝率を落とした。 「(F2は)両レースともに際どいところ狙っていったので、そのときは『仕方がない』と納得はしましたが、やっぱり後になって後悔しました。〝ピンロク〟は自分の性格には合っているけど、それでは勝率は上がらないですからね」 2018年5月のデビューからずっとB級暮らし。それでも20年から3年連続で多摩川のフレッシュルーキーに選出されるなど、周囲からも期待されるポテンシャルの持ち主なのだ。 「これまでは遊び過ぎたというか、さぼり過ぎました。デビューして最初のころはボチボチ、うまくいって、でもやっぱり甘くなかったです。周囲からは『いつA級に上がるの』って言われます。1等を目指すスタイルは変えずに、道中も粘り強く走るように、気持ちを改めて頑張ります」 漢字は違うが、日本を代表する名優と同じ〝ワタナベ・ケン〟。鼻っ柱を折られ挫折を味わうのは、プロローグでいい。中学1年のときに訪れ、ボートレーサーを志すきっかけとなった多摩川ボートの「周年を優勝したい」という夢を結実させるサクセスストーリーを紡いでいく。(井置浩二)