長期金利は夏場に1%超えの声、日銀の利上げと国債購入減額観測
野村証券の松沢中チーフストラテジストは、国債買い入れを減額するタイミングとしては、日銀が3月にマイナス金利を解除した影響を見極め、四半期の買い入れ予定を公表する前の6月の決定会合が最適だと指摘。米国が6、7月に利下げをできなければ円安が続く可能性があるため、7月利上げ観測が高まり長期金利は1%を超えてくると読む。
総裁「はい」発言
植田総裁は4月26日の会見で、足元の円安の「基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよいか」との質問に対し、「はい」と回答した。こうしたやり取りを受けて外国為替市場では円安が加速し、29日の海外市場で1ドル=160円台と1990年4月以来およそ34年ぶりの水準に下落。財務省は4月29日と5月2日に円買い介入を実施したとみられている。
植田総裁は8日の講演後の質疑応答で再度円安について問われ、「急速かつ一方的な円安は、例えば企業の事業計画策定を困難にするなど不確実性を高め、日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」と懸念を表明。基調的な物価上昇率に為替の動きが影響してくる、あるいはそのリスクが顕著に高まってくれば「政策対応することになる」と語った。
主な意見
日銀総裁と首相は日銀がマイナス金利を解除した3月19日に会談しており、今回は異例の短い間隔で再度の会談となった。22年11月、23年8月の会談後の日銀会合ではいずれもYCCの修正が決定された。
9日公表された4月会合の主な意見では、日銀の見通しが実現するのであれば「金利のパスは市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」といったタカ派色の強い発言が数多く出た。国債買い入れ減額についても「市場動向や国債需給を見ながら、機を捉えて進めていくことが大切」など、近い将来の減額を示唆する発言が複数あった。
植田総裁の国会答弁や講演、主な意見でのタカ派的な内容を受けて、9日の債券市場では長期金利が前日比4.5ベーシスポイント(bp)高い0.92%に上昇した。