トランプ政権誕生なら電気自動車危うし!? クルマそのものじゃなく政治に影響される不健全なBEVの現状
BEVは民主党の象徴のひとつ
ちなみにトヨタもかつてはロサンゼルス市近郊のトーランス市に北米トヨタ(Toyota Motor North America)の本社を置いていたが、すでにテキサス州に移転させている。日産も過去にはロサンゼルス近郊に北米日産(Nissan North America)の本社を構えていたが、テネシー州に移転させている。 日系メーカーの動きについては、「すでに西海岸に本社機能を必ずといっていいほど置く必要がなくなったことも大きいともいわれています。過去には日本で生産した北米市場向け車両の陸揚げ地が西海岸地域であったので、そこに本社機能を置くことはある意味重要でしたが、いまはアメリカ各地に現地生産工場を設けており、現地生産した車両がアメリカ国内での主力商品となっていますから、アメリカ全土をオペレーションすることを考えれば、西海岸地域に本社機能を置くことにこだわる必要もないのです」(事情通) 筆者が聞いた話では、地理的な距離感やアジア系住民も多いこともあり、日本車は西海岸地域でとくに人気が高まっていった。そのようなこともあり、「西海岸系のクルマ」などともいわれることも過去にはあったそうだ。ところが日産がテネシー州に本社機能を移転させると、「西海岸系の会社」というイメージがなくなり、比較的東西両沿岸部や中西部、南部といったこともなく、フラットに見られるようになったと聞いたことがある。 話は少し逸れたが、エネルギー政策などかなり民主党色の強いカリフォルニア州からは、おもにコスト面を考慮して大企業が将来的にはほとんどいなくなるのではないかともいわれている。 そうなれば当然、地元自治体の税収は大幅ダウンすることになる。そして全社員が移転先に引っ越すということもないが、多くの比較的所得に余裕のある人がいなくなることも考えられるので、法人税収以外の税収も減ることにもなりかねない。 もちろんそこはアメリカなので新しいジャンルでの起業などを促していくのだろうが、そのときにはなんらかの税金に関する優遇策がなければ、それすらカリフォルニア州以外に取られてしまうだろう。 こうなってくると、アメリカではBEVは革新的な政策を重んじる民主党の象徴であり、保守的思考の強い共和党にとってはアンチな存在となってしまっているようにも見える。 その将来性や存在意義などが置き去りにされ、政治と密接に関係して翻弄されてしまうBEVということもあり、消費者がその動きに引いてしまうことにもなるだろう。BEV普及に政治の影が大きい、それがいま世界的に販売苦戦傾向が目立つ一因になっているのかもしれない。「政府から過度な補助金が出ており、そのため割安感の高い価格になっているのでは」などと、どうしても色眼鏡で見られてしまい、正当な評価が得られにくい中国メーカーのBEVもその例に漏れないともいえるだろう。 すべてがBEVになる時代がすぐ先に訪れるとは思わないが、BEVの普及を阻む理由のひとつに、「政争の具」のようなものとなってしまっていることも大きいのではないかと考えている。
小林敦志