プレミアリーグ現地ファンに疎まれる存在? 「プラスチック・ファン」とは一体誰のこと??
グローバルファンによる“常識外”の行動が目につく問題
このようにローカルファンとグローバルのファンは、全員が全員ではないものの、感情的な分断を生みやすい構造になっている。それに加えてグローバルのファンは、ローカルのファンにとって“非常識”な行動をとることが多いこともまた、壁を作っている。 確かに筆者の感覚だと、観光客比率の高いスタジアムでは、チャントを歌うファンが少なく、イングランドのスタジアム特有の雰囲気が損なわれつつあることを、実体験として感じている。 田丸氏は他にも「例えば、スタジアムの周辺で、リバプールと対戦相手のハーフアンドハーフのマフラーを、非公式に販売されていますが、これを巻くことを現地のファンは良しとしていません。彼らとしては『対戦相手のロゴが入った装飾品を、身にまとう意味がわからない』という感覚です。試合の重要な場面でスマホで動画を撮っているグローバルファンが多いことも問題になっています。彼らにとってアンフィールドは闘う場所なので、大事な場面こそ、撮影をするのではなく声を出して選手を鼓舞してほしいと考えています。実際、サポーターズクラブの代表という立場があって、現地のファンから苦情をもらうこともあります」と現地ファンとの軋轢(あつれき)の実態を語った。 これに対してKei氏は「マフラーに関しては同意ですね。ただ動画撮影に関してはクラブによってそれぞれかもしれません。バーミンガムに関しては戦う場所という感覚まではないかもしれないです。ただ熱心に応援するエリアがあるのも確かなので、そういう場所に座っている場合は、それに合わせたほうがいいかもしれませんね。何よりせっかく現地に行くなら、現地ファンに同化して応援したほうが楽しいと思うし、いろんな学びもあると思います」と、応援しているクラブごとに文化があり、それぞれを理解しにいく重要性を語った。 一方で田丸氏は、日本人にとってプレミアリーグ観戦が観光の一面があることも理解しており、「もちろん記念で対戦相手とのマフラーを買いたい気持ちもわかるので、周りのリバプールファンには、『記念に購入するのもいいけど、それをスタジアムで巻かないでね』『記念撮影や動画撮影は試合前と終了後にしてね』と伝えています。また例えばリバプールやエバートンだと、貧困層に食事を寄付するフードバンクというシステムがあるので、スタジアムに行く際には、パスタや缶詰など、長期で食べられる食品を買って寄付しに行ってほしいと伝えています。そうすれば現地ファンと交流するきっかけにもなるし、グローバルファンがこういう風にローカルのために貢献する行動が少しでも増えれば、相互理解するきっかけになると思っています」と落とし所や、我々にできることを具体的に提案している。