プレミアリーグ現地ファンに疎まれる存在? 「プラスチック・ファン」とは一体誰のこと??
現地ファンにとってのフットボールとは
娯楽が多い日本人にとっては、「たかが一つの趣味」という感覚かもしれないが、現地の人々にとって、フットボールはただの趣味ではない。 田丸氏は「リバプールは2022年にクラブ創設130年を迎えました。その時に記念で出したアニメーションの冒頭にリバプールファンの少年が『130年前、私のひい・ひい・ひいおじいちゃんのトミーは、リヴァプールの初陣に立ち会った。7-1で勝った。悪くないスタートじゃないか?』と語り出すのですが、このアニメーションは、おじいちゃんは娘を今度連れて行くようになり、この娘が大きくなってまた息子を連れて行くようになり、それがずっと続いて自分が生まれたというストーリーで、アニメーションの最後は『私のひい・ひい・ひいおじいちゃんのトミーが、“レッズ”で本当によかったです』というセリフで終わります。このように現地では100年を超えるつながりがクラブとファンの間に、本当にあるんです」と語る。 またイングランドの2部から4部リーグが所属するプロリーグであるイングリッシュ・フットボール・リーグ(EFL)を専門的に取り扱うウェブサイト「EFLから見るフットボール」を運営し、今季は2部バーミンガム・シティの全試合を観戦したKei氏は、「現地のフットボールファンにとって、サッカーやスタジアムは絶対なくてはならないもの。そもそもイギリスはディズニーランドがないようなお国柄ですし、彼らにはフットボールしかないと言っても過言じゃない」と明かす。 田丸氏は「彼らが親から受け継いだクラブの試合を最初に見に行くのは、下手したら1歳とか2歳とか、物心がつく前なんです。そんな小さい頃から家族でスタジアムに通っているので、スタジアムは家庭内でのコミュニケーション手段であり、団欒(だんらん)の場でもあるんだと思います」と続けて語った。 こう聞くとイギリス内におけるフットボール観戦を、意訳するのであれば、昭和の日本における“家族でちゃぶ台を囲んで食事を共にする一家団欒の時間”に近いのではないだろうか。 このような神聖な場が、誰とも知らない人々に土足で踏み込まれているのだとすれば、無意識でマイナス感情を抱く気持ちはわからなくもない。 もちろん歓迎できることではないが。