プレミアリーグ現地ファンに疎まれる存在? 「プラスチック・ファン」とは一体誰のこと??
ローカルファンの貧困とスタジアム離れ
そもそも、現在のイギリスは貧困化が進んでいる。例えばユニセフが発表した富裕国の子どもの貧困率は英国が最も高い水準で、20.7%もあるという。 そんな生活が苦しい現地の貧困層、労働者階級にとって、クラブのグローバル化とともに値上げされていくチケット代は、生活に大きな痛手を与えている。 英政府発表によると、2022年度会計でイギリスの1世帯あたりの年間可処分所得の中央値は3万2300ポンドとされている。月次だと約2700ポンドだ。また2024年2月の時点でのイングランドでの平均家賃は1276ポンドとされており、残り使える金額は月で1500ポンド程度しかない。年度がずれる上に家賃は中央値ではなく平均値のため厳密な金額ではないが、おおよその数字としては十分だろう。 この1500ポンドを現在のレートで円換算すると、約29万円になるものの、これは日本人感覚と実態に乖離がある。200カ国以上の生活費を調査しているウェブサイト「Expatistan」によると、ロンドンの物価は日本より、82%も高いという。この物価差を加味すると、実態としては15万円程度が、月に使える家賃以外の生活費だと考えたほうがいいだろう。しかも1世帯、つまりファミリーでこの金額だ。 さらに最貧困層世帯の5分の1の可処分所得の中央値は、14500ポンド、月に1200ポンドしかない。日本人感覚に変換するなら12万円程度だ。仮に家賃が半額程度かかるなら、一つの家庭は月6万円で生活しなければならない。フットボールは労働者階級のスポーツだと言われているが、メインターゲットの暮らしは苦しい。 一方、現在の各クラブのチケットはサッカーメディア『Goal』によると、例えばアーセナルで28.5~103ポンド、チェルシーだと25~71ポンドもする。なお地方だとやや安くなり、マンチェスター・ユナイテッドの場合36~58ポンド程度だ。ただこれらの最低価格は、初期販売かつ、一部座席のみのチケット価格なので、クラブ公式のリセールで買うならさらに跳ね上がるし、一家4人で見にいけば、子ども料金を加味しても3桁ポンドは確実だ。 既にこんなにも苦しい状況にも関わらず、年間9%も家賃が上がり、チケット代も上がるのだとすると、現地のファンの反発が起こるのは当然だ。 この結果、イギリス国内では、現地の一部のローカルファンのフットボール離れが進んでいる。 この件に関して、10年以上、毎年複数回リバプールの町を訪れ、トータルの渡英回数が30回を超える熱狂的なリバプールファンであり、OLSC Japan(オフィシャル・リバプール・サポーターズ・クラブ・ジャパン)代表の、田丸由美子氏はこう語る。 「以前、道を挟んでアンフィールドの目の前に住んでいる老夫婦のご自宅にお招きされたことがあって、いろいろ話をしている中で、『今日は試合日ですし、この後、試合を見に行きますよね?』と聞いたところ、『僕はもう見に行けないんですよ、チケットが高すぎて』とおっしゃられていて、正直に言うと、ショックを受けました。だって日本人の私の感覚で言うと、アンフィールドの目の前に住めたら、毎試合ホームゲームを見に行けるし、憧れの生活じゃないかと思っていたんです。ただ実態としては、アンフィールド周辺は貧困層が多いのもあり、本当に地元の人々が試合を見に行けなくなっている実態がありました」