「こんないい将棋を!」天才少年・藤井聡太13歳vs佐々木勇気21歳に谷川浩司が驚いた日から8年…“一本取った”藤井が竜王戦先勝の要因は?
藤井聡太竜王(22=名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)に佐々木勇気八段(30)が挑戦している第37期竜王戦七番勝負。その第1局は10月5、6日に東京・渋谷「セルリアンタワー能楽堂」で行われた。タイトル戦に初めて登場した佐々木は藤井との勝負にあたって、作戦を練るだけでなく、日々の生活を竜王戦に合わせて準備したという。激闘が繰り広げられた第1局の戦いと模様を、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】 【レア写真】藤井くん6歳“パジャマ姿”でおじいちゃんと将棋、「佐々木さん…スパゲティとハンバーガーのダブル注文!」羽生さん畠田さん25歳“美しい和服結婚式”も!天才棋士レア写真を全部見る
藤井竜王にどうやったら勝てるかを考えてきた
2017年7月2日。佐々木五段は竜王戦の決勝トーナメント2回戦で、デビュー戦から負けなしで最多記録を達成した藤井四段を破り、30連勝を阻止したことから「藤井を止めた男」として話題になった。その後、両者はNHK杯戦の決勝で2回連続で対戦し、佐々木は今年の同棋戦で藤井に勝って初優勝した。そして、竜王4連覇を目指す藤井の前に再び立ちはだかった。 佐々木八段は竜王戦の挑戦者になると、こう決意を述べた。 「藤井竜王にどうやったら勝てるかを考えてきた。七番勝負ではそれにしっかりと取り組み、勝たなくてはいけない」 研究を深めて作戦を練るだけでなく、日々の生活を竜王戦に合わせて準備したという。 タイトル戦の対局は午前9時に始まる。毎日、早く起きてその時刻には盤の前に座るように心掛けた。また、健啖家で食べることが大好きなので、竜王戦の対局で昼食、おやつを多く注文するために、事前に関係者に相談した。自身の普段の食生活を実行することで緊張感を緩和し、盤上で実力を発揮したいと考えたようだ。 両者の対戦成績は、竜王戦第1局を迎えるまで藤井4勝、佐々木2勝。公式戦の初対局は前述の2017年7月の竜王戦だった。
藤井13歳vs勇気21歳、谷川浩司が驚いた対局とは
ただ実は、その1年前の2016年5月に愛知県岡崎市の岡崎公園で開催された野外の将棋イベントでも対戦している。 渡辺明竜王対谷川浩司九段の席上対局、講演会、トークショー、指導対局などの催しがあり、延べの参加者は8000人に及んだ。そして、佐々木五段(当時21歳)と藤井三段(同13歳)の対局も特別に組まれた。 藤井は当時から天才少年として注目されていたが、棋士の卵である奨励会員なので、表立つことはあまりなかった。しかし出演する棋士たちが舞台に立ったとき、超満員の観客は学生服姿の藤井にカメラを一斉に向けたという。初参加した三段リーグで四段に昇段し、5人目の中学生棋士が誕生するのを期待してのことだ。 佐々木-藤井戦は1手20秒の超早指しで行われた。 猛烈な攻め合いから難解な終盤に突入し、両者は秘術を尽くした攻防を繰り広げた。解説を務めた谷川九段は「こんないい将棋を指されたら、後で指す棋士はつらい」と苦笑した。そして、佐々木が大激闘を制して勝った。なおこの対局は、藤井少年の取材にテレビ、新聞のメディアが駆けつけていた。翌年にプロ公式戦で連勝街道を突っ走り、「藤井フィーバー」が巻き起こる前兆となった。 なお、佐々木と藤井は同じ板谷一門の棋士である。東海棋界の発展に尽力したのは板谷四郎九段、進九段の親子棋士である。佐々木は父・板谷の弟子である石田和雄九段の門下。藤井は息子・板谷の弟子である杉本昌隆八段の門下。板谷父子は東海棋界や一門からタイトル保持者が生まれることが悲願だっただけに、竜王戦で一門の棋士同士が初めて対戦したことを、泉下で大いに喜んでいるだろう。
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