「こんないい将棋を!」天才少年・藤井聡太13歳vs佐々木勇気21歳に谷川浩司が驚いた日から8年…“一本取った”藤井が竜王戦先勝の要因は?
スパゲティにハンバーガー…ダブル注文の新手
今期竜王戦第1局の前夜祭で両対局者は、次のように語った。 佐々木「藤井竜王の将棋は、棋譜を見ただけではわからない。実際に盤を挟んで膨大な変化を読み合わないとわからない強さがある。できるだけ終盤までいい勝負で戦いたい」 藤井「佐々木八段の将棋は、攻めの鋭さが一番の特長。それに受けの手厚さや粘り強さもあって、内容が非常に充実している。互いの読みがぶつかり合う面白い将棋を指したい」 第1局では「振り駒」が行われ、藤井の先手番に決まった。 佐々木は2日制・各8時間の持ち時間の対局は初めて。ほかに和服の着用、おやつの注文、封じ手も初体験だ。 戦型は予想通り、角換わり腰掛け銀になった。ともに研究を重ねているので短時間で駒がぶつかり、実戦例がある局面に進んだ。その後、佐々木は公式戦で前例のない手をわずか1分で指した。事前に研究した手をぶっつけたようだ。 10時に午前のおやつが出され、佐々木はシュークリームとメロンケーキ。12時30分からの昼食休憩では、ミートソースのスパゲティにハンバーガー。2日目の食事もダブル注文の「新手」が続いた。一方の藤井はいつものように一品ずつで、午前のおやつはプリン、昼食は牛ステーキ重(※いずれも飲み物込み)。 序盤の指し手は早かったが、藤井が歩交換した6筋の歩を自陣に打つと、佐々木は予想しなかったようで大長考に沈んだ。そして昼食休憩を挟む2時間14分で、歩交換した3筋の歩を元の位置に打った。何とも渋い展開となった。13時30分の昼休明けから18時の封じ手まで、指し手は4手しか進まなかった。
佐々木が「一本を取られた」と感じたワケ
佐々木の手番の局面で封じ手となった。 必然の一手なのでその前に指すこともできたが、47分の考慮時間で封じ手をした。藤井の本命の予想手を一晩に考えてみたかったようだ。 封じ手用紙を入れる2枚の封筒には、両対局者は裏の上下の2カ所に署名する。通常は名字を書くが、佐々木は名字と名前を分けて書く「新手」を試みた。 2日目に封じ手が指されると、藤井は9筋の歩を突いて攻めた。佐々木は意表を突かれたようだ。終局後に「一晩も考えたのに読みがまったく外れた。一本を取られた」と語った。ただ藤井は「そんなに良くはない」と思っていた。 その後、藤井が2筋から攻めて敵陣に角が成ると、佐々木はそれを逆用した反撃で馬を取った。藤井は左右挟撃の寄せを目指した。佐々木は穏やかな応手を選ばず、肉を切らせて骨を断つ寄せにいった。自陣の6筋の金を取らせる代わりに、藤井の5筋にいる玉に襲いかかった。最終盤の局面は難解な形勢に思われた。しかし、藤井は鮮やかな決め手を放って寄せ切った。 藤井は竜王戦第1局で117手で先勝した。終局時刻は18時32分。 1図(※外部サイトでご覧の方は関連記事からご覧になれます)は、佐々木の投了後に想定される局面の部分図。後手玉は受けなしで、先手玉は上部への逃げ道が開けていて詰まない。
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