進む「農福連携」、農業の雇用創出と障がい者の自立を両立させるアプローチとは
胡蝶蘭、野菜、そしてバラ。ゆっくりではあるが、着実に事業の土台は固まりつつある。売上高を現在の数千万円から25年度には1億5000万円にまで伸ばすことで、特例子会社ではハードルが高いとされる黒字化を目指している。取締役の鈴木崇之さんはこう訴える。 「障がい者はお客さまではありません。時には厳しく接することもありますが、各人の得意なことを生かして、戦力として能力を発揮してもらうことが大切ではないでしょうか」
「農福連携」の認知度の低さが課題
農福連携の二つの成功例を見てきたが、問題もある。政策の認知度の低さだ。障がい者と農家のマッチングがうまくできていないという。農水省でも「ノウフクアンバサダー」にTOKIOの城島茂さんを起用するなど、周知するべく力を入れているが……。 「人手の足りない農家が相談に行く先は、まだシルバー人材センターか、外国人労働者の受け入れ窓口止まり。障がい者福祉施設にそうした仕事が頼めるというのは思いつかない」と農水省の田村さんは残念がる。 今後さらに日本の人口が減り、地域の衰退が加速していく中で、農福連携の意義はより大きくなるだろう。そして、何よりも全ての人が生き生きと働ける社会の実現に向けて、国をはじめとする関係各所がやるべきことはまだまだ多いはずだ。 --- 伏見学(ふしみ・まなぶ) 1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。