年収700万円“昇進とは無縁”の54歳サラリーマン、まさかの副業で年商1,000万円を稼げたワケ【経営コンサルタントが解説】
趣味をビジネスにすることの厳しい現実
健一さんは経理の仕事を続けながら、副業として陶芸作品の販売を始めることにした。しかし、最初はなかなか売れず、展示会に出品しても関心を持ってもらえないことが多かった。娘さんの手ほどきでオンラインショップを開設してみたが、アクセス数が少なく収入もほとんどなかった。 また、陶芸に集中するあまり、本業の経理の仕事に支障をきたしはじめた。あるときには、信頼してくれていた上司から「最近、業務態度が怠慢にみえる」と叱責される始末。 陶芸の材料費や道具の費用がかさみ、家計にも負担をかけてしまった。とうとう家族からも「副業なんてやめて、本業に専念したら?」という声が上がり、健一さんは自分の選択に悩む日々が続いた。
カフェオーナーとのコラボで見えた新たな道
そんな時、健一さんは地元のカフェのオーナーである高橋さん(仮名)と出会った。高橋さんは、地元のアーティストとコラボレーションしてカフェの空間を彩りたいと考えていた。彼は健一さんの作品に魅了され、「カフェの一角で作品を展示販売してみませんか?」と提案したのである。 健一さんはこの提案を受け入れ、高橋さんのカフェで作品を展示販売することになった。初めての展示の日、健一さんは緊張しながらも、カフェの一角に自分の作品を並べた。訪問客がどのような反応を示すのか、内心不安でいっぱいだったが、初日の夕方、一人の女性がコーヒーを飲みながら、じっと彼の作品を見つめているのに気づいた。 その女性はカウンター内の高橋さんに「この作家さんはどんな方なんですか?」と尋ねた。高橋さんが、すかさず目くばせして合図をする。健一さんは思い切って自己紹介し、作品に込めた思いや制作過程を説明した。 女性は興味深そうに話を聞き、「とても気に入りました。私の家にも飾りたいので購入します」と言ってくれた。健一さんにとっては、これがカフェで初めての販売だった。この経験は、彼に大きな自信を与えることになる。
健一さんが成功できた理由
その後、健一さんは高橋さんやカフェの常連客の意見を取り入れ、カフェの雰囲気や季節に合わせた新しい作品を次々と制作するようになった。たとえば、秋には落ち葉をモチーフにした茶器セットや、冬には温もりを感じさせるシンプルで厚みのある器を作った。これらの作品はカフェの客たちに好評で、健一さんの名前は少しずつ広まっていった。 ある日地元のアートギャラリーから「ぜひ、うちでも展示してほしい」という依頼が舞い込んだ。健一さんはこれを聞いて驚くとともに、自分の作品が認められたことに深い感動を覚えた。カフェという小さな場所で始まった展示が、次第に彼の作品の評価を高め、さらなるチャンスを引き寄せたのだった。 オーナーの高橋さんはSNSでカフェの活動を発信しており、そのなかで健一さんの作品も紹介された。これにより、健一さんの作品は広く知られるようになり、オンラインショップの売上も少しずつ増加していった。 作品展での受賞歴も増え、彼の陶芸作品は高く評価されるようになってきた。最終的に健一さんは本業を辞め、副業として始めた陶芸ビジネスを本業とすることを決意したのだった。現在、彼のビジネスは年商1,000万円を超え、地元では独自のブランドとして確立されつつある。家族との時間も増え、充実した毎日を送っているという。 副業から本業へ 田辺健一さんの物語は、平凡な会社員でも自分なりの“無形資産”を活かして成功することができることを示している。 彼のビジネスが軌道に乗った鍵は、自分の趣味や特技を認識し、それを活かす方法を見つけ出したことにある。また、他者とのコラボレーションを通じて、新しい機会を掴むことができたことも忘れてはいけない大きな要因だ。 人生のふとした曲がり角で立ち止まっている人にとって、自分の得意分野や興味を活かして新しい道を切り開く勇気とヒントとなるのではないだろうか。 鈴木 健二郎 株式会社テックコンシリエ 代表取締役
鈴木 健二郎
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