なぜ富士通「Uvance」は生まれたのか サステナビリティに注力する強みに迫る
SXを掲げる利点
――ユーバンスのサステナビリティの定義は、どのように定めているのでしょうか。 まず、当社でマテリアリティ(組織が優先して取り組んでいく重要課題)を経営層が定めていて、これに該当するものかどうかで判断しています。基本的には国連のSDGsなどの国際標準に準拠していて、ここから富士通らしさが出せる領域を重点的に定めています。 ユーバンスも他社のDXブランドなどと同様、パートナー企業からの御用聞きではなく、課題を先回りして聞き取った上でのソリューションビジネスを主眼に置いています。そこには当然コンサルがあり、提供するソリューションの軸に標準アーキテクチャがあり、その標準アーキテクチャをアップデートしていくことも当社が担います。この部分は他社にも共通している部分が大きいと思います。2月には「Uvance Wayfinders」というコンサルティングブランドを立ち上げ、ユーバンスのコンサル機能も強化しています。 他社との違いがあるとすれば、ユーバンスでは顧客との取り組みがビジネス面でのインパクトと、サステナビリティ面でのインパクトの双方に効くものであるかどうかも重視しています。顧客に提案する上では、ユーバンスの理念を必ず伝えていて、この考え方に共感してもらえるかも重要です。 ――SXを掲げることで、DXと比べて顧客と理念を共有化しやすいメリットはありそうですね。 あると思います。サステナビリティを掲げることで目標を数値化しやすい部分もありますし、地球環境に良いという大義があることで、共感してもらいやすい利点もあると思います。サステナビリティを大義として掲げることで、共感を得やすいですし、ビジネス面でも顧客と中長期的な目線で市場を作っていくことができます。 社会課題を解決するには、従来の業種や企業単位では到底解決できないものばかりです。ユーバンスによって企業や業種を超えてデータをつなぐことによって新たな知見を得て、新たな価値創出をすることも狙いとしています。そのような市場は2025年までにグローバルで約25兆円に成長すると試算しています。このクロスインダストリー(異業種連携)の考え方もユーバンスでは重視しています。 ――SXを掲げたことで、うまく進んだ事例はあるのでしょうか。 SXに向けたクロスインダストリーがユーバンスの発想としてあり、業種や企業を超えたデータ統合力がユーバンスの強みです。実際にこれがうまく働いた事例が、足元で急速に増えています。その起点となった事例として、ある大手製造業の例があります。この企業はグローバルに3000社のサプライヤー、18の工場、20の既存システムで20万以上のパーツ数を管理しており、その全オペレーションの効率性とレジリエンスの向上を課題としていました。 当社はこれに対して「Fujitsu Data Intelligence PaaS」(DI PaaS)によるデータ統合を、既存のシステムを停止せずに、数週間で実現しました。このDI PaaSは、データ統合や分析をオールインワンでできるプラットフォームで、富士通のAIサービスである「Kozuchi」(コヅチ)も提供しています。データ統合によって在庫状況や流通状況を可視化したことによって、サプライチェーンマネジメントの業務量を5割削減しました。 さらにAIによって、300種類のパーツの需要予測を2カ月かけて最適化し、全体として2桁億円のコスト削減を実現しています。このように業種や企業を超えたデータを短期間で、大きな事業改革ができるのがユーバンスの強みと言えます。サプライチェーンと表裏一体でCO2排出量をはじめとするESG課題も可視化されます。現在このソリューションをDynamic Supply Chainオファリングとして標準化し、100社以上に展開しています。 8月には米スタートアップのParadigm社と、ドラッグロスに向けた戦略的パートナーシップ締結を発表しました。ヘルスケア業界と製薬業界を超えた価値創造プラットフォーム構築の事例などがあります。