なぜ富士通「Uvance」は生まれたのか サステナビリティに注力する強みに迫る
日立製作所が2016年にデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーである「Lumada」(ルマーダ)を立ち上げて以降、国内大手が似たようなDXブランドを設立する動きが続いている。2024年5月だけでNECの「BluStellar」(ブルーステラ)、三菱電機の「Serendie」(セレンディ)、KDDIの「WAKONX」(ワコンクロス)が立ち上がった。いずれも単なる営業ではなく、顧客の課題解決に主眼を置いているのが特徴だ。 【画像で見る】Fujitsu Data Intelligence PaaSの概念図 こうした中で、DXだけでなくSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)も打ち出し、着実に拡大してきているのが、富士通が2021年に立ち上げた「Fujitsu Uvance」(富士通ユーバンス。以下、ユーバンス)だ。 ユーバンスは、同社が環境問題に積極的に取り組んでいた背景から生まれた。Uvanceという造語も「あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させる」願いを込めている。 DXブランドが乱立する中、なぜSXを掲げ続けているのか。富士通グローバルソルーションビジネスグループ Strategic Planning本部長でユーバンスの事業戦略責任者を担う藤井剛氏に聞いた。
ユーバンス誕生の経緯 サステナビリティを打ち出した理由は?
――ユーバンスを立ち上げた経緯は? 当社はもともとIT企業からDX企業への転換を打ち出していました。DXを顧客に提供するため、まずわれわれ自身が変革を実践して、良い実例になるべく「Fujitsu Transformation」こと「フジトラ」を2020年10月から推進してきました。この取り組みはDXやジョブ型の導入など、富士通自体の事業モデルの変革に取り組むという、どちらかというと社内向けの施策でした。 フジトラによって社内のDX自体は進んだのですが、日本社会を見渡してみると「DX後進国」と呼ばれるように、思うように進んでいない現状があります。当社はパーパスに「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」を掲げています。どうしたら日本社会全体のDXを推進していけるのか。持続可能な社会を生み出す上で、当社に何ができるのかを模索していました。 こうした中、2020年に新型コロナウイルスが世界的に流行し、コロナ禍が訪れました。リモートワークなど、一気に働き方などのDXが進みました。 新型コロナウイルスは環境破壊によって生まれたという考え方もあります。2020年6月の世界経済フォーラム(WEF)でも「グレート・リセット」(大転換)が掲げられ、サステナビリティが議論の的になりましたつまりコロナによって「未来を脅かす問題が私たちの予想をはるかに超える形で起きている」という危機感がさらに高まりました。これがユーバンス誕生のきっかけにもなっています。ユーバンスは2021年10月に発表し、翌2022年に、正式な組織本部を立ち上げました。 ――SXを前面に打ち出している点が、他社のDXブランドとの違いだと思います。ユーバンスは社内でどのように定義しているのでしょうか。 実はユーバンスは、当社ではブランドとしては位置付けておらず、事業モデルとして打ち出しています。ユーバンスの定義としては、オンクラウドで標準アーキテクチャを採用したソリューションが提供されているものや、それによってグローバル展開できるものになっているかどうかなどを基準として、ユーバンスの事業を開発、拡大しています。 この標準アーキテクチャは、広く普及している主要なクラウドプラットフォームに加え、世の中に先行するMicrosoft AzureやAmazon Web Services(AWS)、カナダの生成AIサービス「Cohere」(コヒア)との連携などです。これにより、グローバルに事業を展開する顧客にいち早く、優れたサービスを提供できます。 ユーバンス事業の売り上げは、事業初年度の2022年度はもともと進めていた事業を基盤として2000億円でしたが、2023年度には3600億円と大幅に伸びています。今年度の売上高は4500億円以上を見込んでいます。 ――ユーバンス事業の売り上げというのは、どのように区別しているのでしょうか。 当社のグローバルソリューションビジネスグループが主体として進めている事業を、基盤として進めています。仮に各事業部門の取り組みをユーバンスと判断する場合は、その定義に当てはまるものであるかを精査し、それに該当する商談や案件をユーバンス事業売り上げに加えるようにしています。