優先順位誤った「石破外交」トランプ氏との会談先送りのまま…「中国すり寄り」は外交オンチどころか〝確信犯〟に見える
石破首相の今年最初の外遊(9~12日)は米国ではなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のマレーシアとインドネシアだ。
元駐オーストラリア大使で外交評論家の山上信吾氏は「石破首相の東南アジア歴訪は優先順序を誤っている。昭恵さんが、トランプ夫妻の夕食会に招待された後、トランプ氏から就任前の会談に前向きな発言が出たにもかかわらず、石破首相は『きちんと戦略を練って』などといって先送りした。対米外交では、『おいで』と言っているときに会うのが常識だ。石破首相には、国益のために他国と競争しようとする姿勢が見えない。日本製鉄のUSスチール買収問題も、石破首相のような『評論家的な姿勢』ではダメだ。日米が連携して鉄鋼の供給網で中国に対峙(たいじ)する経済安全保障の視点もない。首相や閣僚が前面に出るべきだ。これでは、喜ぶのは中国だけだ」と苦言を呈する。
一方で対中外交では、「すり寄り」のような姿勢も目立つ。
日中間には、中国軍による日本の排他的経済水域(EEZ)への弾道ミサイル撃ち込みや、中国軍機や艦船による領空侵犯や領海侵入、日本のEEZ内でのブイ設置、在留邦人への相次ぐ殺傷事件、複数の日本人拘束事件、日本産水産物を輸入禁止、駐日大使による暴言、靖国神社での乱暴狼藉(ろうぜき)など、懸案事項が多々ある。
ところが、岩屋氏は昨年12月に訪中すると、懸案事項での具体的進展もないなかで、中国人向けの短期滞在ビザの緩和措置を発表した。2月には王毅外相兼政治局員の来日案も浮上している。
山上氏は「日本外交は本来、同盟国・米国との関係を固めたうえで、中国に向き合うものだ。ペルーでの日中首脳会談で石破首相は習近平国家主席と両手で握手して『戦略的互恵関係』の推進を確認しながら、トランプ氏との会談は先送りしている。これでは、同盟国(米国)を〝向こう岸〟に置いて、脅威のある国家(中国)の軍門に下ったような姿勢だ。『外交オンチ』どころか『確信犯』に見える。マレーシアとインドネシアへの訪問も、『日本同様、中国にすり寄ってもいい』と悪いメッセージを与えかねない」と警告する。