見る角度で別の画面に、JDIが開発したユニークな「車載ディスプレー」の効果
1枚のディスプレーをあたかも別々のディスプレーのように操作できるユニークな車載製品をジャパンディスプレイ(JDI)が開発した。一つの画面から二つの高画質映像を出力する仕組みで、運転席側と助手席側で異なるコンテンツを見ることができる。タッチ操作の識別もできる。2025年から量産を始め、30年に1000億円規模の売り上げを目標にしており、経営再建に貢献する。(編集委員・小川淳) 【写真】見る角度で別の画面になる「車載ディスプレー」 「すでに(納入は)決定済みだ。今後はいかに広がっていくかだ」。JDIのスコット・キャロン会長兼最高経営責任者(CEO)は、今回開発した2ビジョンディスプレー(2VD)の手応えに自信をのぞかせる。 JDIによると欧州や中国の自動車関連企業と具体的な商談が進んでおり、導入の決まった企業もあるという。自動運転や電気自動車(EV)の普及により、車内空間をいかに快適に過ごせるかが重要な訴求点となる中、単なる情報表示の端末だった車載ディスプレーの役割も高まる。 従来は運転席側と助手席側で別々のディスプレーを搭載し、運転席側ではカーナビゲーションの画面を見たり、助手席側ではニュースや映画を見たりするなどの使い方をしていたが、開発した2VDなら1台で済むため、導入コストを抑えたり、車内空間を広く使えるなどの利点がある。 これまでも1画面を見る角度によって二つの異なる映像を出力する技術はあったが、より高精細な映像が求められる中、画質の向上が課題だった。JDIでは低温ポリシリコン(LTPS)と液晶パネル技術を活用し、同社従来品に比べ輝度で2倍、コントラストで3倍と高精細にすることに成功した。 また、タッチパネルでは新しいアルゴリズムを開発することで、運転席と助手席からの操作を完全に分離可能となり「誤動作の心配なく、安全かつ快適に操作できる」(福永誠一執行役員)。こうした機能の搭載は世界初だという。 JDIでは国内拠点で前工程、中国で後工程の生産を検討している。また、車載以外に広告スペースや交通機関、コンピューターゲームなどでの応用も考えており、さまざまな顧客と協業を進めていく。30年に車載以外も併せて1000億円規模の売り上げを目指しているが、スコットCEOは将来的に「1兆円単位の(売り上げにつながる)革命的技術であることは間違いない」と強気の姿勢を見せる。 24年3月期が10期連続当期赤字だったJDIにとり、独自の次世代有機ELディスプレー技術「eLEAP」と並び、経営再建の切り札として積極的に売り込んでいく。