「将来、なりたい自分」がはっきりしている?若者に見る“キャリア自律”の現在地
● 「キャリア構築が不十分」なことが 20~30代の離職理由になっている では、キャリア自律について、働く個人はどのように捉えているのでしょう。リクルートが行った「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査」で、20~60代の求職者を含む社会人約1000人にアンケートを実施しました。 まず、「キャリア自律・キャリアオーナーシップ」という言葉への印象を聞いたところ、「期待を感じる」と回答した個人は40.9%でした。「重要な課題であると感じる」に関しては、20代は51.5%と半数を超え、30代は47.5%に。若手社会人の半数は、キャリアへの課題意識を持っていることがわかります。 一方で、「不安を感じる」「息苦しさを感じる」「焦りを感じる」といった印象を持つ人も約3割にのぼっています。 次に、キャリア自律の状態について、自身がどれくらいあてはまるか聞きました。その結果、「私はキャリア自律ができていると思う」に対して、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した個人は24.0%。重要な課題だと認識している割合と比較して、約半分に留まっています。キャリア自律のための環境に関しては「自分のキャリアについて支援してくれる仲間がいると思う」と回答した個人は 28.1%でした。 また、20~30代の直近の離職理由を聞いた設問では、「充分なキャリア構築がされないと思った」に対して、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した個人は合計で54.8%になりました。「何年も職場にいる先輩社員・ベテラン社員を見て未来に不安を覚えた」には、55.6%が「あてはまる」「ややあてはまる」と答えており、20~30代の離職経験者の半数以上が、キャリア構築に関して不充分だという不安を感じることを離職理由に挙げていることがわかります。
● 企業と個人間の対話、上司との対話の深さが キャリア自律意識に影響を与える 人材不足が重大な経営課題になっている今、「充分なキャリア構築がされない」と判断され、社員が去っていってしまうことは、事業継続・成長の大きなリスクになります。では、個人のキャリア自律意識はどのようなときに高まるのか。キャリア自律意識に影響を与える企業側の要因を見ていきましょう。 配置(異動)時の説明とキャリア自律意識の関係について聞いた調査(「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」)では、「配置(異動)の際、私が希望するキャリアプランやスキル開発ポイントと整合的であるか確認があった」と答えた人の55.4%が「私はキャリア自律ができていると思う」と答えています。それに対し、「確認がなかった」人で、キャリア自律ができていると思うと回答したのは16.5%にとどまりました。 同じように、「会社が私に向いているポジションを、私の強みや推奨理由を伝えた上で促してくれた」と答えた人の45.3%が「私はキャリア自律ができていると思う」と答えたのに対し、「促してくれなかった」人で、キャリア自律ができていると思うと回答したのは15.8%でした。 同調査では、「仕事の社会的意義や価値を言語化できる」こととキャリア自律意識の高さには一定の相関関係があることがうかがえます。「自分の仕事の社会的意義や価値を言語化した群」の37.3%が「私はキャリア自律ができていると思う」と答えたのに対し、「言語化しなかった群」は13.0%でした。 上司との対話内容とキャリア自律意識の関係においては、「上司が社外の視点でのアドバイスをしてくれた」「上司とスキルの言語化やモチベーションの源泉を探る対話をした」個人ほどキャリア自律意識が高くなっています。 具体的には、「上司が社外の視点でのアドバイスをしてくれた」と答えた人の42.4%が「私はキャリア自律ができていると思う」と回答。「してくれなかった」と答えた人では、キャリア自律ができていると思う人は16.8%でした。