水素エネルギーの地産地消 京都府が工業団地で実証事業
使用しても二酸化炭素を排出しない次世代のエネルギーとして期待される水素。京都府は、持続可能なエネルギーシステムの構築をめざして、水素エネルギーの導入と普及を推進している。6月の環境月間に合わせて、府が府北部で取り組む実証事業を紹介する。 水素は、水から作ることができる。気体、液体などさまざまな状態で貯蓄、輸送が可能で、エネルギー効率の高さや環境負荷への低さから、脱炭素化に必要不可欠なエネルギーとして注目を集めている。 府は水素の製造、輸送、利用を一貫して支える仕組み「水素サプライチェーン」の構築に向けて、水素で走る燃料電池自動車や、ガソリンスタンドのように水素を充填する水素ステーションの普及に取り組んでいる。
さらに府北部では2021年度から、水素で動く燃料電池フォークリフト(FCFL)の普及に向けて、製造や物流施設で実証事業を進めている。府北部に移動式水素ステーションの駐留地を設け、そこからFCFLを試験導入する企業へ水素を届ける。 21年度は舞鶴市内で行い、22年度は範囲を広げて、福知山市のSECカーボン(長田野工業団地)、綾部市の片山化学工業研究所(綾部工業団地)にも、舞鶴市の駐留地から水素を週1、2回配送した。 22年度までは府外で生産された水素を使っていたが、23年度は長田野工業団地で「地産地消型のモデル事業」に取り組み、新たに水電解による水素製造に挑戦した。昨年12月から3月までの3カ月間、工業団地に立地する5社がFCFLを試験導入。団地内のSECカーボンに設置した水電解装置で製造した水素を5社に供給し、FCFLを日々の業務で使用してもらった。
3月に福知山市昭和新町の府立中丹勤労者福祉会館で、市内外の事業者向けに水素セミナーを開き、国の動向や府の事業などを説明。FCFLの実証事業を行うSECカーボンを訪れて、約80人が水素エネルギーについて学んだ。 3年間を振り返り、京都府は成果として「参画いただいた企業や府民らにFCFLが安全かつ、性能面でも問題なく使用できることを理解してもらえた」とする一方、「水素、FCFLの導入コストが高く、水素を供給するインフラの整備、需要創出などへの支援が必要」と課題を上げる。