自民総裁選で注目された選択的夫婦別姓制度が公約で後回しになる理由 ジェンダー平等は争点化されにくい?各党の主張を読むポイントを聞く【衆院選2024】
女性差別撤廃条約の実効性を高めるための「選択議定書の早期批准」にも言及しています。共産党、立憲民主党、国民民主党にも入っていますが、女性の権利を国際水準にしていくためには重要です。 ただ、これほど立派な政策集を出しているのに「公明党が与党にいた意味って何ですか?」とも問いたいです。直近の約30年で2度の政権交代時期はありましたが、日本のジェンダー格差ランキングがここまで低迷し続けている責任の多くは自公政権にあります。自民党の「女性活躍」「多様性」に関する政策は分量も少なく、具体策に欠けます。なぜ公明党は政権内でもっと自民党に働きかけられなかったのか、と思います。 そもそも自民党のジェンダー政策は矛盾に満ちています。1985年に男女雇用機会均等法が制定されたのとほぼ同じタイミングで、配偶者に扶養され、一定の年収内であれば保険料を支払わない「第3号被保険者」制度が創設されました。働く時間を抑える「年収の壁」の一つとも言われます。2015年には女性活躍推進法を制定しながら、一向にこの女性の就労意欲を減退させる「年収の壁」の積極的な見直しには踏み込んでこなかったのです。
人手不足が深刻になったあたりから、自民党は女性に対して「活躍」というきれいな言葉で誤魔化しながら労働力としての役割を期待していた一方で、伝統的な性別役割分業の枠組みは決して見直そうとしない。結局女性は働きながら、家事も育児もして、という苦しい状況に陥っています。 そういう意味で、公約を見る時にポイントにすると良いと思うのは、各党の社会保障制度の分野で言及されている「年収の壁」問題への対応と、もう一つが家父長的な家族観を解消する入り口となる「選択的夫婦別姓制度」への対応だと考えます。どの党が、女性たちをただの労働力として見なさず、一人の人間として尊重しながら、経済的自立にも後押ししてくれるのか、ということです。 選択的夫婦別姓制度は仕事上の不利益という視点にとどまらず、女性のアイデンティティーや人権の問題という視点で語られるようになりました。結婚後の姓を巡って、自民党は旧姓の運用拡大、日本維新の会は旧姓使用に法的効力を与える制度の創設を提唱していますが、2つの名前を持つことになる旧姓の通称使用はマネーロンダリングなどさまざまな問題も抱えていると言われています。