《連載:茨城県内2024 10大ニュース》ひたちなか海浜鉄道工事認可
■湊線延伸へ1.4キロ先行 茨城県ひたちなか市を走る市出資の第三セクター、ひたちなか海浜鉄道湊線(勝田-阿字ケ浦駅、14.3キロ)の延伸区間の工事が11月18日、国から認可された。 同鉄道の吉田千秋社長は「ようやく延伸のスタートラインに立った」と述べ、安堵(あんど)の表情を見せたのは、国の延伸事業許可から今回の認可を得るまで4年近くかかったからだ。 2021年1月に延伸事業許可を受けた当初計画は、現在の終点阿字ケ浦駅から国営ひたち海浜公園西口付近まで3.1キロ延ばし、新駅二つを設置するもので、事業費は78億円。24年春の開業予定だった。 市などは22年1月までの工事認可申請を目指したが、当時猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で関係者との協議が遅れた。さらに急激な物価高で事業費が増える見通しとなるなど、工事認可申請は2回延期。計画自体も見直しを迫られることになった。 結果、市などは昨年12月、延伸区間を一括開業する計画を変え、阿字ケ浦駅から海浜公園南口付近に整備する「新駅1」までの1.4キロを先行整備し、開通させる方針を決めた。 新駅1の建設場所も阿字ケ浦駅寄りから南口近くに変えたことで、海浜公園へのアクセスを向上させ、観光客の利便性を高めた。近くでは非鉄金属大手のJX金属(東京)が新工場を建設し、県が工業団地を造成しており、進出企業の通勤需要の取り込みも狙う。 公園西口付近に整備する「新駅2」までの残り1.7キロ区間は、先行区間の整備状況を踏まえて決めるとした。 全体事業費は、列車が通る高架橋部の一部を盛り土構造に変更するなど削減に努めたが、126億円に膨らんだ。うち先行区間は59億円。 3月に国から計画変更が認められ、新駅1までの工事認可を申請していた。 認可を受け、市などは25年度から鉄道施設整備に必要な用地を確定させる測量や詳細設計を行う予定で、30年春開業を目指す。 延伸実現への歩みを進めたが、課題は事業費の調達。新駅1までの事業費59億円のうち、海浜鉄道が18億円、自治体側が41億円余を負担する。 市の担当者は「国や県の支援の活用を検討する」として、本年度中に国の財政支援制度活用の前提となる「鉄道事業再構築実施計画」を策定し、同計画の認定を得られるよう作業を進めている。 大谷明市長は11月29日の定例会見で、認可取得で「一つの大きな山を越えた」としつつ、「(同計画)策定にもさまざまな課題がある。国の補助が得られるよう一生懸命取り組む」と気を引き締め、着実に事業を進める方針を強調した。
茨城新聞社