ニュースでは伝わらない 戦乱のアフガンで確かに続く日常
アフガニスタンというとどんな印象を抱くだろうか? 1970年代の終わりから始まったソ連のアフガン侵攻(~1989年)、ソ連撤退後の内戦、タリバンとの戦い、9.11後のアメリカによるアフガン戦争(2001~2014年)、そして現在まで終わることのないテロと戦乱。戦争が「日常」となった中で生き続ける人々。しかし、そこには平和が当たり前の、私たちと変わらない日常もある。ニュースで報道されるセンセーショナルな映像や写真の裏では、日々、同じように人々がたくましく生き続けているのだ。
私はアフガン戦争後の2006年と2007年に計3回、アフガニスタンを訪れ、首都カブールから仏教遺跡群で有名なバーミヤン、そして山岳地帯へと向かった。(フォトグラファー・鈴木雄介)
●フルーツのスムージー
アフガニスタン首都カブールの旧市街地は買い物客であふれ返っていた。日用品や食料品を買い求める人々。頭からつま先までを覆うチャドルを物色する女性たち。軍服のまま買い物袋をぶら下げる兵士たち。通りの喫茶店では民族衣装に身を包んだ男性たちが紅茶やフルーツをたっぷり使ったスムージーを飲みながら談笑している。焼きたての香ばしいナンの匂いがパン屋には漂い、色とりどりの香辛料や野菜、フルーツが店頭には並ぶ。雑然とした通りは活気であふれ、戦争とは無縁な日々の営みの姿があった。 かつてはヨーロッパの若者たちが中古車を使って陸路でアフガニスタンを訪れ、カブールの宝石街でお土産を買い、中古車を売ってそのお金でヨーロッパまで飛行機で戻る旅が流行ったという。1970年代のクーデター、そしてソ連侵攻前のアフガニスタンは西洋的な文化も香る豊かな国だったのだ。
●木陰でくつろぐ男たち
カブール郊外の山中の木陰でラグマットを敷き、チャイを飲みながらくつろぐ男性たち。場所によっては標高2000メートルを超える山岳国家のアフガニスタンは直射日光が強い。暑い日中はこうして木陰で休みながら友人と過ごす男性たちの姿をあちこちで見ることができる。 写真を一枚撮ると手招きして「一緒にチャイを飲まないか?」と誘ってくれた。体格の良い、立派な髭を蓄えているがとても人懐っこく、旅人をもてなすのが大好きだ。アフガニスタンの男性は、その精悍で男らしい外見とは裏腹に花が大好きで、如雨露(じょうろ)で花壇の花にせっせと水をやっている姿をよく目にした。カメラを持っている私を見つけると、自慢の花壇やそこらに生えている綺麗な花の前に連れて行かれ、そこで写真を撮ってくれとせがむのだった。