13歳の少年と36歳の女性との不倫…全米で誰もが知る事件の真実とは? 映画『メイ・ディセンバー ゆれる真実』。
誰もが知る事件の誰も知らない真実。
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』 36歳の女性と13歳の少年による"メイ・ディセンバー事件"から23年後。女優の出現により、それぞれの心と真実が揺らぎ出す、衝撃のドラマ。 監督:トッド・ヘインズ 脚本:サミー・バーチ 出演:ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、チャールズ・メルトン 7月12日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
13歳の少年と不倫関係に陥った36歳の女性が実刑判決を受けて、少年との子どもを獄中出産。出所後、ふたりは“晴れて”結婚をするーー。 ’90年代のアメリカで実際に起きた事件から着想を得た本作は、その顛末を直接的に描いているわけではない。だからこそ、観る者は想像をかき立てられることになる。 物語の設定は、事件から23年後。少年だったジョーは、当時のグレイシーと同じ36歳になっている。ある日、女優のエリザベスが平穏に暮らすふたりのもとを訪れる。世間を騒がせたあの事件の映画化に先立ち、グレイシーをモデルにした役を演じることになったエリザベスは、役作りのために夫婦と行動をともにし、周辺の人々にも取材を重ねていく。 注目すべきは、グレイシー役のジュリアン・ムーアと、エリザベス役のナタリー・ポートマンの初共演だろう。 事件が起きた街に暮らし続け、表向きは周囲の人々にも好かれ、何よりも年の離れた夫婦は愛し合っているように見える。その状況がにわかに信じがたいエリザベスは、グレイシーの心の奥底に潜む感情を探ろうとするのだが、グレイシーはこんなことをやってのけるだけあって“たいしたタマ”なのである。 その感情が、理解できなければできないほど引き込まれ、執着してしまうのは、やはり役者の性なのか。エリザベスが取材の範囲を超えて、グレイシーの狂気に触れようとする過程は、自らの内面へと潜っていくことも意味し、ミイラ取りがミイラになる様をまざまざと見せつけられる。そしてもっと言えば、その様子を観る者にもショッキングな事件の傍観者ではいられなくなるような、数々の「なぜ」が湧き上がってくる。 メガホンを取ったのは、『キャロル』で女性同士の美しい恋愛を描いたトッド・ヘインズ。今作に登場するふたりの女性は、恋愛感情こそ介在しないものの、深く理解し、心を重ね合わせたり、反発し合ったりするという意味では、恋愛以上ともいえる激しいやり取りが描かれている。