「首相秘書官」「首相補佐官」どう違う? “影の総理”評の大物も
●省庁の官房
実は内閣だけではなく、各省庁にも「官房」と呼ばれる役職があります。省や府、庁、行政委員会と会計検査院に置かれる部局の一つで、各組織の内部管理と行政事務の総合調整を行います。各省庁内の各所と調整を行う役割と考えると分かりやすいでしょう。基本的にキャリア官僚がその職に就きます。
機能強化と首相官邸
今回、解説している各役職は「首相官邸機能の強化」あるいは「内閣機能の強化」の流れで設置され、その役割が見直されてきた経緯があります。 官邸機能の強化は、アメリカ大統領府の大統領補佐官制度や、イギリス型の議院内閣制などを手本にされているといわれています。 そもそも首相官邸では、従来は財務省や総務省、外務省といった中央官庁の役人の力が強かったため、その状況を改めるべく、国民が選挙で選んだ国会議員から選出される首相を筆頭とした官邸機能を強化することを目指しました。また、首相が任命する大臣の集まり、つまり内閣の力を強めて、政治家主導でさまざまな政策を決定し、実行していく狙いがあります。 こうした方向性が生まれたきっかけは、1995年の阪神大震災で政府の初動対応が遅れたという苦い経験にあります。当時、首相官邸のスタッフは、内閣官房長官、官房副長官を除くと全てが官僚でした。日本の官僚機構は優秀ですが、さまざまな局面で必ずしも即座に判断を下せる組織ではありません。急な事態、不測の事態に機敏に対応するのは、組織の構造や法的な位置づけからして難しいのです。 特に大災害やテロ、他国からの侵略行為などの非常事態には政治家による政治判断を次々に出していく必要があります。そうした政治家の判断、首相の判断を下しやすいようにする、そうした環境を整備したのが官邸機能の強化です。
※ ※ 首相の公式な事務所である首相官邸、そして内閣官房を中心に、さまざまな役割の人たちがチームを組んで、首相を支えています。政治家や政治家の秘書、中央官庁の官僚らがブレーン役、調整役として役割を担っています。こうした視点をもとに国会や政治をとりまくニュースを見ると、より分かりやすくなるでしょう。
------------------------------- ■戸桝茂哉(とます・しげや) ライター、時事アナリスト。神奈川大学卒業。衆院議員秘書として活動後、IT企業に就職。地方創生とメディア運営の知見を生かした講演活動や独自視点を交えた政治経済予測を行う