「首相秘書官」「首相補佐官」どう違う? “影の総理”評の大物も
●首相秘書官
首相秘書官は内閣官房の一員で、正式には「内閣総理大臣秘書官」といいます。その名の通り、首相に影のように寄り添って、各種の事務を取り扱い、首相の指示で政府の各部署や与党、各省庁などとの調整に当たる大事な役職です。 首相秘書官の存在は内閣法第20条で決められ、定数を7人とする国家公務員です(将来的には定数は5人になる見込み)。その内訳は、政務担当秘書官1名、事務担当秘書官6名の計7名で構成されています(あくまで慣例)。 政務担当秘書官は、一般的に「首席秘書官」と呼ばれることもあります。首相に永年連れ添ってきた国会議員秘書が就くことが多く(近年は官僚からの登用もみられる)、首相秘書官の取りまとめ役としての色合いが強くなっています。大臣である副総理や官房長官を除けば、ある意味、首相に最も近いポジションとも言えます。 森友学園などをめぐる一連の問題で、キーパーソンとして取り沙汰される今井尚哉氏は、現在、安倍晋三首相の首席秘書官であり、まさにこの役職に就いているということになります。今井氏は経済産業省出身で、第一次安倍内閣では事務担当秘書官を務め、その際に安倍首相と確固たる信頼関係を築いたといわれています。 加計学園の問題で名前が挙がっている柳瀬唯夫氏(現経済産業審議官)は、第二次安倍内閣で2012年12月に事務担当の首相秘書官に任命されました(2015年8月に退任)。 首相秘書官は、具体的にどのような業務を担当しているのでしょうか。柳瀬氏は10日の国会での参考人招致の中で、こう答えています。「首相が所掌する政策分野は広い。私(の担当)はイノベーション、成長戦略、TPP、地球環境問題、エネルギー、規制改革など多岐にわたる。それぞれごとに現状や課題について担当の部署などから話を聞き、必要なことは首相に相談し報告する」 2013年11月に女性初の首相秘書官に就任した山田真貴子氏(2015年7月に退任)も首相官邸のホームページで「情報通信政策、女性登用政策、地域活性化策などを担当するとともに、広報担当として総理官邸の情報発信、記者対応等を担っています」と説明しています。 ちなみに政務担当である首席秘書官には、今井氏のように首相からの信頼が厚い人物が任命されることが多く、その意味で、首相に強い影響力を持つと評されることがあります。歴代の秘書官の中では、小泉内閣における飯島勲氏(メディア戦略に長け、政務担当秘書官として官邸を束ねる)の当時の政権内での影響力の大きさはよく語られるところです。 これに対して事務担当秘書官は、基本的に財務省、外務省、警察庁、防衛省、経済産業省から1人ずつ内閣官房に出向する形で役割を担います。出向してくる秘書官は、出身省庁の課長級や局次長級、あるいは審議官級というエリートで、将来の事務次官候補と目されるケースが多いのが特徴です。