米国のガザ抗議、重なるベトナム反戦デモ バイデン氏指名まで3ヵ月、抗議団体は大規模デモ計画
【ワシントン古川幸太郎】11月の米大統領選に向け民主党のバイデン大統領が党候補指名を正式に獲得する全国大会を約3カ月後に控える中、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に抗議するデモの影響が懸念されている。抗議団体は8月19~22日に中西部シカゴで開かれる大会に合わせて大規模なデモを計画。ベトナム戦争の反戦デモ隊と警察が衝突した1968年の全国大会の再来を警戒する声も上がる。 「ガザでの大量虐殺と、米国のイスラエル支援の停止を求め、私たちの思いを全国大会に届ける」。抗議デモの運動体「民主党大会への行進」はこう宣言する。既に70超の団体が参加を表明。大会はバイデン氏の晴れ舞台だが、主催者は「私たちの目標は、バイデン政権は大量虐殺に加担してきたというメッセージを送ることだ」と訴え、数万人の参加を目指している。 「ガザ危機はバイデン氏にとってのベトナムになりかねない」と警戒するのは、民主党系無所属のサンダース上院議員だ。ベトナム戦争への厭戦(えんせん)機運から不出馬に追い込まれた当時の現職ジョンソン大統領を引き合いに「バイデン氏の姿勢は若者だけでなく、民主党支持者の多くを疎外しているではないかと、心配している」と米メディアに語る。 68年大統領選の民主党候補指名争いは波乱の連続で、ジョンソン氏の撤退後、最有力候補のロバート・ケネディ上院議員は選挙運動中に暗殺。同年8月にシカゴであった全国大会でハンフリー副大統領が指名されたが、反戦デモ隊と警察が衝突し、数百人の逮捕者が出る惨事に発展した。ハンフリー氏は本選で「法と秩序の回復」を掲げた共和党のニクソン氏に破れた。 ただ、当時と今では状況が異なる。米国はベトナム戦争の当事者で計5万8千人以上の兵士が死亡したが、今回のガザでの軍事行動には直接的に関与していない。抗議デモも一部の大学にとどまる。米政府関係者は「夏休みになれば抗議活動は落ち着く」と楽観視する。 だが、ガザではアラブ系米国人が親族を失い、人道危機が深刻化している。抗議デモを主導するのは、前回のバイデン政権誕生を支えた若い世代で、90年代半ば以降に生まれた「Z世代」の有権者は4千万人以上とされる。 前回大統領選でバイデン氏を支持したミシガン大のマニー・ブルックスさん(22)は「60年代の反戦運動は知らないが、今の交流サイト(SNS)の力を見くびってはいけない。バイデン離れは世代を超えて広がっている」と警鐘を鳴らす。 共和党のトランプ前大統領は演説で、68年をほうふつさせる「法と秩序の回復」を訴えている。