侵略的外来種「殺人スズメバチ」の根絶を宣言、侵入から5年で「画期的な成果」、米国
アジア原産のオオスズメバチ、最後の目撃から3年が経過
米国で「殺人スズメバチ」というあだ名で知られるアジア原産の侵略的外来種、オオスズメバチ(Vespa mandarinia)が米国から根絶された。2024年12月18日にワシントン州農業局(WSDA)と米農務省が宣言した。2019年、この昆虫がワシントン州北西部とカナダのバンクーバー島で初めて確認された際、当局は拡散を防ぐための積極的な駆除計画を開始したが、5年あまりでミッションが達成されたことになる。 【動画】うなるスズメバチの大群、巨大な巣の駆除劇が話題 「外来種を米国本土から根絶することは、極めてまれで画期的な成果です」と、北米の社会性スズメバチに関する著書があるクリス・アリス・クラッツァー氏は述べている。 「侵略的外来種の恒久的な駆除は可能だということの証明です。ただし、十分な資金と世間の関心があればですが」 この体長約5センチという世界最大のスズメバチは、強力な毒針を持つうえ、セイヨウミツバチのコロニーをわずか30分で全滅させることで知られている。これら2つの理由から、当局はすばやい根絶を望んでいた。 米農務省は、非在来種の「根絶」の基準を、最後にその姿が確認されてから3年が経過することと定めている。 「これはあくまで規制上の用語です」と、WSDAの広報コンサルタント、カーラ・サルプ氏は述べている。「当然ながら、このスズメバチが二度と持ち込まれないことを意味するわけではありません」
侵入経路は不明
オオスズメバチがどのような経緯で北米に侵入したのかはわかっていない。しかし、遺伝子検査では、ワシントン州で見つかった個体は、バンクーバー島のものとは密接な関係がないことが強く示唆されている。 このことから、科学者らは、オオスズメバチは約80キロ離れた2つの地点から別々に侵入したのではないかと推測している。 残念ながら、いわゆる「殺人スズメバチ」が広く知られるようになった一方で、その他の数多くの非在来種や侵略的外来種がもたらす問題はなくなっておらず、そちらの駆除にはあまり多くの支援が得られていない。 たとえば、何百種類もの植物を食べるマイマイガの新たな侵入は、ワシントン州で毎年起こっていると、サルプ氏は言う。 また、別の大型スズメバチであるツマアカスズメバチが、2023年にヨーロッパから米国ジョージア州に偶然持ち込まれたとクラッツァー氏は指摘する。この種もまた、セイヨウミツバチを捕食するという。 「いずれにせよ、侵略的外来種の制御に成功したというのはすばらしい成果です!」と、クラッツァー氏は言う。
文=Jason Bittel/訳=北村京子