認知症患者の暴言・暴力・介護拒否などの周辺症状「BPSD」にガンマ波サウンドが効果。介護現場の雰囲気の改善にも
医療法人社団 国立あおやぎ会は、ガンマ波サウンドを6ヵ月間聞いた認知症患者における周辺症状「BPSD」(暴言・暴力・介護拒否など)の改善効果について、発表を行った 「ガンマ波サウンド」を聴くことができるテレビスピーカー「kikippa」 * * * * * * * ◆認知症患者に対する新たなアプローチ 国立あおやぎ会は、運営する介護老人保健施設 国立あおやぎ苑(東京都国立市)において、認知症患者に対するケアの新たなアプローチとして、2023年12月から、音声を40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を聴くことができるテレビスピーカー「kikippa」を導入。 スピーカー設置前の2023年12月と、設置後6か月の2024年6月で、認知症患者への効果や影響を検証した。 検証方法は、中核症状(*1)をHDS-R(長谷川式認知症スケール)、BPSD(周辺症状)(*2)をDBD-13(認知症行動障害尺度)で評価。この結果、DBD-13が有意に改善することが認められた。 また、BPSDの改善は、スタッフの介護量を減少させ、介護現場の雰囲気の改善にもつながったという。 *1:中核症状とは、脳の器質性変化によって生じる記憶障害や遂行機能障害などの症状 *2:BPSD(周辺症状)とは、認知症患者に対して不適切な接遇がなされると生じる暴言・暴力・介護拒否などの症状
◆介護負荷の軽減にも 検証は、介護老人保健施設 国立あおやぎ苑に入所する2F(認知症フロア)の認知症患者25名と、3Fと4F(一般病床)の患者31名を対象に実施。 認知症患者が入所するフロアに設置したテレビに「kikippa」を接続し、音声を40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を毎日9時間、6カ月にわたって認知症患者の検証対象者に聴いてもらい、その前後で、中核症状とBPSDにおいて数値的あるいは臨床的に変化が生じるかを評価した。 同時に比較対象群として通常のテレビが設置された一般病床入所者の変化も評価した。 「ガンマ波サウンド」を聴いた認知症患者の中核症状をHDS-Rを用いて評価したところ、その平均点数に有意な変化は認められなかったが、BPSDをDBD-13で評価した平均点数は17.96から14.96に3.00ポイント低下し、改善が認められた。 一方、一般病床入所者では、中核症状とBPSDでの有意な変化は認められなかった。 認知症の中核症状に対しての効果は認められなかったが、BPSDが改善したことによって、患者だけでなくスタッフにも明るい表情が生まれ、介護現場の雰囲気が著しく改善したという。 40Hzの音声刺激は、前頭葉にガンマ波を生じる働きがあるため(*3)、BPSDの脱抑制症状に効果を示していることが推測できる。今回は6カ月間での検証であったが、今後も期間を延長して検証を続ける予定だ。 *3:米国・マサチューセッツ工科大学の研究チームによるマウス試験により、40Hz周期の音刺激で、聴覚野と海馬でガンマ波の発生・血管新生・アミロイドβタンパク質減少・記憶障害の改善が確認された (Cell,2019)https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674
「婦人公論.jp」編集部