「子育ては迷惑をかけたっていい!」「育児を窮屈と感じる親が増えているのは…」 保育歴50年の柴田愛子さんが今一番伝えたいこと
「子どもって迷惑をかけるもの」「子どもだから仕方がない」という認識を普通に持ってほしい
だいたい、子育ては迷惑をかけるものですよ。子どもは騒ぐし、うるさいのが当たり前ですもの。私が今、世の親たちに一番言いたいことは「子育ては迷惑をかけたっていい」ということ。だからといって居直ってはいけませんけどね。謙虚にご迷惑をかけましょう。 人間は生きやすくなるために群れを作ってきたと思うのね。「群れる」ことで、頼ったり頼られたりという関係性ができて心地よく生きていけるから、「迷惑をかけるのはお互い様」が了解し合える間柄になるのです。 それが、時代と共に住まい方・働き方が変わって、どんどん「個」を守る方向に傾いてきました。今、さまざまな世代が地域で一堂に集うことがどんどんなくなってきていませんか。 昔は当たり前に町内会で掃除をしたり、行事があったりでみんなが顔を合わせる機会があったけど、集合住宅住まいの「個別」の暮らしが増えたことで、地域でのつながりは希薄になりました。そこにコロナがやってきて、ますます窮屈になった。「個」を守る暮らしは、煩わしさはないけれど、困ったときに誰かに頼る、という発想や行動ができなくなった。迷惑をかけ合える関係をどれだけ作っていけるかが、生きやすさにつながっていくのにね。 家の近所に新しい保育園ができたのですが、周囲に子どもたちの声が聞こえないようにという配慮で、ものすごく塀が高いの。こういう「子どもの声は騒音」と認めるような社会の動きも、親たちに孤独な子育てを強いてしまっているのだと思います。私は「子どもって迷惑をかけるもの」「子どもだから仕方がない」という認識を普通に持てる社会を復活させないと日本の未来はない、くらいに考えるようになりました。
地域の世代間交流を復活しませんか
先日、昔勤めていた幼稚園の父兄の方から呼ばれて、その地域の集まりで、窮屈な思いで息苦しい子育てをしている親たちの現状を話す機会をいただきました。 参加してくれたのは、すでに子育てを終えた60代以上の方が多かったのですが、ほとんどの方が「えっ、そんなことになってるの? 知らなかった」と驚きの反応で「自分たちに何かできることはないのか」という声が多数あがったのです。 そこで私が言ったのは、「ご近所で子ども連れの親を見かけたら声をかけてください」ということ。「こんにちは」の挨拶からでいい、「お子さんいくつになったの?」とかね。最初は絶対にお母さんたちからヘンな顔をされると思うけど、懲りずにやってください、と伝えました。 何度も続くうちに顔見知りになって、それが地域のつながりができていく「素」になる。だから、お母さんたちも、そんな地域のおばさん・おじさんたちから声をかけられたら、怖がらないでほしいです(笑)。