「GTR」も「タイプR」も名乗った名車中の名車! 「いすゞベレット」は偉大なり!!
■「ベレG」の愛称で呼ばれた人気の「ベレット1600GT」とは?
ベレットのGTグレードは、大衆車がベースとは思えないほど本格的な走りに振った構成のクルマでした。 ベースとなったセダンは、前がダブルウイッシュボーン、後ろがダイアゴナル・スイングアクスル式(いわゆるセミトレーリングアーム式)という、小型車では初めての四輪独立懸架方式を導入しました。 これは、当時の小型車としては異例の装備で、一部では「和製アルファロメオ」とも呼ばれたそうです。その性能はサンデーレースに出場するプライベーターたちの戦力として実績をあげていたことからも窺えるでしょう。 そのセダンと同じ骨格と足まわりに前ブレーキをディスクブレーキ化、空力に有利なクーペボディを得て、新たに開発された1600ccの直列4気筒OHVエンジンを搭載したのが「ベレット1600GT」です。 当時、大人気だったツーリングカーレースでは、ライバルのプリンス・スカイラインや日産・ブルーバードらと熾烈な戦いを演じ、何度か優勝を果たしましたが、トヨタがコロナの車体に1600ccのDOHCエンジンを搭載した「1600GT」を投入してきたことで、旗色が変わりました。
■GTのホットバージョン「GTR」が生まれた経緯
トヨタ「1600GT」は、専用開発の1600cc直列4気筒DOHCエンジンの高出力をアドバンテージに一気にレースの主導権を握るようになり、「ベレットGT」の戦闘力では歯が立たない状況になってしまいました。 しかし、そのときいすゞの関連会社の「鈴木鈑金」が、レース用にと117クーペの「G161W型」DOHCエンジンを搭載した車両を密かに製作していました。その車両は「ベレットGTX」と命名されて、いすゞワークスからレースに出場。1600GTを10馬力上まわる120馬力を発するエンジンによりパワーのビハインドを埋め、見事に勝利を勝ち取ります。 これでGTカーとしての面目を取り戻したベレットは、その市販バージョンである「ベレットGTR」をリリースすることになります。 このときのエピソードとして、フラッグシップであった「117クーペ」と同じエンジンを格下のベレットに搭載するのはいかがなものかという反対意見が出て、一時計画が頓挫しかけたそうです。 「ベレットGTR」は120馬力を発する「G161W型」DOHCエンジンの搭載に加え、バネレートをアップさせたサスペンション、ブレーキブースターの追加と走りのポテンシャルをアップさせています。 外観では、「GTR」のアイコンにもなっているフォグランプをグリル下部に追加。黒いボンネットとサイドのストライプによるツートンのカラーがオプションで用意されました。ちなみに現存する車両の多くはこのツートン仕様です。 1971年のマイナーチェンジで小変更が加えられるとともに、名称が「GT タイプR」へと変更されました。 「GTX」で勝利を挙げた勢いもあり、レースでの活躍を期待された「GTR」でしたが、そのときに日産ワークスが「スカイライン2000GT-R」を投入。2000ccのDOHCエンジンは160馬力を誇り、1600cc勢は後塵を排することになってしまいます。 その後、1973年にはすべての「ベレット」シリーズが生産終了を迎え、10年の歴史を終えます。 販売台数は、ベースとなったGTが1万7000台強なのに対して、「GTR」と「GT タイプR」は合わせても1400台程度しかないため、かなり希少な存在となっています。