次の目標は「稲妻」。パリ五輪旗手・半井重幸が描くブレイキンの新時代 4位の悔しさ上回る感謝
パリ五輪のブレイキン男子で4位だった半井重幸(ダンサー名・SHIGEKIX、第一生命保険)がインタビューに応じ、日本選手団の旗手を務めた大会を振り返るとともに、今後への意気込みを語った。 【写真】表敬訪問で「写真撮り直し」をお願いしたパリ五輪出場のダンサー。その理由が意外でかっこよかった
―印象に残ったことは。 「踊っている瞬間は本当に楽しかった。もちろん追い求める結果はトップで、そこに対する悔しさは今なおある。でも挑んだことにまずすごく意味があり、本当にかけがえのない時間を過ごせた。自分にとって絶対に必要な挑戦と経験だった」 ―メダル獲得はならなかった。 「悔しさはすごくあったが、それを大きく上回る感謝の気持ちが湧いた。やり切った自分、体への感謝、応援してくださった方々、一緒に戦ってきた皆さん、ブレイキンの魅力に触れ、大会を見てポジティブな反応を送ってくださった方々への感謝もすごくあった」 ―初実施の競技ということで注目され、重圧は感じたか。 「当時は全然感じていなくて、いつも通り過ごしていた。何が起きても当日は絶対いい状態で迎えられるはずだという確固たる軸があり、全くぶれる感覚はなかった。ただ、今思い返すと、油断すれば呼吸することすら忘れるぐらいの張り詰めた緊張感があったと思う」 ―1次リーグから3位決定戦まで1日でこなす過酷な日程を戦った。
「どうエネルギーを切らさず、ラストラウンドをファーストラウンドと見間違えてしまうような、エネルギッシュな踊りを見せたいと思っていた。味の素ビクトリープロジェクトのサポートを受けながら、バトルの間にパワーボール(おにぎり)や、ゼリー状のものをとり、胃に負担をかけないようにしながらエネルギー補給し、最後まで自分の準備したものを見せることができた」 ―自分らしさを表現できたか。 「少なくともブレイキンが持つ魅力である『ナンバーワンの前にオンリーワン』というところは見せられたと思う。日本選手団がたくさん活躍し、メダルも獲得した中で、僕の五輪での姿をすごく覚えてくださる方がいることはうれしいことであり、魅力をそれだけ伝えられたかなと思う」 ―カルチャーとして始まったブレイキン。日本は科学的なアプローチも交えて準備を進めた。 「ブレイキンが新時代を迎えたという感覚があった。五輪競技になることで、今あるブレイキンがなくなってしまうんじゃないかとの不安の声もあった。味の素が2022年の世界選手権から海外での大会にも同行してくれて、栄養学の助言や食事のサポートをしてくれた。さらに(バトルの採点分析を行って強化につなげた)情報戦略でも、本来のブレイキンを大切にし、寄り添いながら、そこに必要な要素が肉付けされていった。全く違うものに当てはめるわけではなく、ありのままのブレイキンに新たなものが加わっていく、そういう感覚があったのが本当に良かった」