セカオワ Fukase、Creepy Nuts DJ松永、flumpool 山村隆太、Gackt……俳優としても活躍するマルチな才能
「4人家族って幸せそうでいいですね」――。これは、映画『キャラクター』(2021年)におけるFukase(SEKAI NO OWARI)の鮮烈な登場シーンでの台詞だ。運転席に父親、助手席に母親、後部座席に娘と息子。人通りがなさそうな山奥の道路で、通りがかりの一家の車に乗せてもらったFukase演じる両角。父親は、両角のその言葉に対して、3人家族でも5人家族でもきっと幸せだろうと返す。ここでの両角の反応が抜群だ。食い気味に、「いやいや」と「いえいえ」を混ぜたように「いやいぇ」と否定してくるのが妙にリアルで不気味。そして「3人や5人じゃだめなんです」と、早めの口調でボソボソとつぶやき、目を見開いて首をまわす。その後、惨劇現場が映し出される。 【画像】Creepy Nutsが“香川の歌姫”とパシャリ……『MONSTER baSH 2023』オフショット “優しい殺人鬼”と銘打たれた両角の猟奇性を、ちょっとした言い回しと表情で完壁に表現してみせたFukase。このワンシーンは、Fukaseが俳優としても才能に溢れていることを証明するにふさわしいものとなっていた。 そんなFukaseが、2024年12月13日公開の映画『はたらく細胞』に出演することが発表された。同作は、映画『翔んで埼玉』シリーズ(2019年/2023年)や映画『テルマエ・ロマエ』シリーズ(2012年/2014年)の武内英樹監督がメガホンをとり、永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、阿部サダヲらが出演。人間の体内を主な舞台とし、赤血球、白血球など無数の細胞を擬人化してその働きをヒューマンドラマ風に描いている。ただ9月2日時点では、Fukaseの役名は伏せられており、白髪、白い顔、白い衣装、そして頬に血管を走らせたビジュアルのみが公開されている。スター揃いのこの映画のなかで、Fukaseがいかに特別な役割で登場するのかがよく分かる。 Fukaseは、どこか神秘的なアーティストイメージもある。そういった彼のあり方が、役柄は違えど、『キャラクター』にも『はたらく細胞』にも反映されていると言えるだろう。 ■Gacktはそのアーティストイメージがキャラクターにも反映 そんなFukase然り、今も昔もミュージシャンの演技は、俳優のそれとはまた違ったおもしろさがある。筆者が特に感心したのは、2023年公開の映画『さよなら ほやマン』のアフロ(MOROHA)だ。同作は、弟と二人で平穏な島暮らしをしている青年・阿部アキラが、それまで目を背けていた現実と向き合うことになるという物語。 この映画の公開に際して筆者が行ったインタビューで、アキラを演じたアフロは作品発表時に公開されたコメント「生き様でナメられたくないから、台本を気が遠くなる程に読み込んだ」(※1)について、「この映画の俺の立ち位置って、ミュージシャンが役者の畑へ行くということ。でももし逆の立場だったら、それってどう思うか。こっちが命をかけてきた音楽の畑にそれ以外の畑の人が入ってくるとき、少なくとも本気であることを示して欲しいんです。だから自分も、映画のスタッフさんや共演者に向けて『本気で向き合います』という意味を見せたかった。だから、この映画へ出演するにあたって小型船舶の免許を取ったりしました」と語ってくれた(※2)。その言葉通り、感情をむき出しにして歌い続けてきたアフロだからこそできるまっすぐな演技がそこにあった。やはり彼特有のアーティストイメージが、この物語、この役柄に重ねられていたと言えるだろう。 Gacktも、どこか浮世離れしたアーティストイメージを持っているがゆえ、俳優として作品に出演するときも、そういった役に扮することが多い。 戦国武将など歴史上の人物をAI技術でよみがえらせて“最強内閣”を組閣する映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(2024年)では、Gacktは経済産業大臣の織田信長役を務め、日本中に旋風を巻き起こすカリスマとしてその存在が描かれた。『翔んで埼玉』シリーズでも、白馬の王子様のような見た目の“隠れ埼玉県人”を演じていた。両作品ともに、Gacktにぴったりなビジュアルのキャラクターである。一方で、バラエティ番組『芸能人格付けチェック』(ABCテレビ/テレビ朝日系)などでも見られるが、Gacktは高貴な印象をあえて崩して“ギャップ笑い”を誘うのもうまいアーティストだ。コメディ的なノリにも対応してきた経験が、『もしも徳川家康が総理大臣になったら』や『翔んで埼玉』にも活かされている。 逆に、本来のアーティストイメージを感じさせず、作品に出演する際は良い意味で俳優的な印象の演技を見せているのが、山村隆太(flumpool)ではないだろうか。 “俳優・山村隆太”が注目されたきっかけとなったのは、俳優デビュー作のドラマ『突然ですが、明日結婚します』(2017年/フジテレビ系)だ。山村演じる名波竜は、結婚に夢や理想を抱いているヒロインの高梨あすか(西内まりや)に対し、「幻想でしょ、そんなの。結婚のきれいなところを並べているだけだよ」「日本では40から50秒に1組くらい離婚してるって」と冷たく突き放す。つまり、なにかと癇に障ったり、嫌味ったらしく思えたりする男だ。映画『風の奏の君へ』(2024年)でも、元恋人・青江里香(松下奈緒)と再会する真中淳也を演じた。日本茶の魅力で地元を盛り上げようとする意気を持つ一方で、里香には冷たい態度をとり続ける淳也。山村はflumpoolで多くの温かな歌を届けてきたが、音楽活動時とはまた違って、俳優としてはドライなキャラクターがよく似合う。