【デーブ大久保コラム】大谷翔平の50-50達成で思い出す。西武・秋山幸二さんは本当にすごい方でした
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 このコラムを読んでいただいているときには「50-50」を達成しているかもしれませんね。それくらいドジャース・大谷翔平のバットは湿っていません。(※現地時間9月19日に「50-50」を達成)これだけの記録をつくってしまうと、どこかで力が入り、スイングが崩れてしまうものですが、平常と何も変わらない。ここが本当にすごいところです。 【選手データ】秋山幸二 プロフィール・通算成績 多分、自分を俯瞰(ふかん)して見られているのだろうな、と思います。周囲が騒いでいることも知っているはずですし、大谷が打席に立つ、もしくは塁に出てリードをするだけで球場の雰囲気もすごいことになります。それでもいつものように淡々とプレーする姿は圧巻です。多分、さまざまなプレッシャーの中で戦ってきているので、そのような慣れもあるのかもしれません。 120年以上もの歴史を誇るMLBにおいて、強靭な選手たちが各国から集ってきたすごい舞台で、誰もが成しえなかったことを、あっさりとやってのけようとしています。129試合目での「40本塁打&40盗塁」達成という早い段階での達成があったからこその偉業ということになります。 日本では40-40もいませんが、そこに近い数字を残したのが西武の秋山幸二さんでした。先輩ですが「幸ちゃん」と呼ばせてもらっていましたが、その幸ちゃんが1987年に43本塁打、38盗塁を記録しています。そのときの試合数は130試合。幸ちゃんの本塁打&盗塁を成功させるスピードは、今年の大谷のそれとほとんど同じですね。 初めて会ったときは、本当に身体能力はすごかったですが、打撃センスは私のほうがありました(本人もそこは認めてくれています)。でもここからがすごかった。本当に努力をし続けた選手でしたね。当時の西武の二軍施設にはお化けが出るといううわさがありました。 深夜の室内練習場のほうから「カーン!」「カーン!」という音が聞こえてくるという話です。それが実際は薄暗い明りの中で、夜な夜な幸ちゃんがマシンを使って練習をしていたことが判明しました。それくらいバットを振っていました。 走るほうも天才的に速い選手だったのですが、私が一番びっくりしたことは「クセを盗むこと」と「配球を読む」ことの天才でした。もちろん、打撃でもそれが大いに生きてきます。それと同時に盗塁のときにも、投手の癖を見抜くのが抜群にうまかったんです。 しかも盗塁のときには、幸ちゃんが相手投手に「癖を知っている」ことがばれないようにスタートを切っていました。それができた選手なんです。また一方で三番打者でしたから、四番のキヨ(清原和博氏)の邪魔にならないように2球以内で走り出したりしていました。 そういう中での43本塁打&38盗塁ですから本当にすごい選手だったと思います。大谷の活躍のおかげで、あらためて幸ちゃんは本当にすごい選手だったんだと再認識ました。
週刊ベースボール