評価急上昇の酒井高徳は、内田を超えられるか?
試合開始早々から、自分のサイドにいるパレスチナの左MFアシュラフ・アルファワグラの動きを警戒すべきと考えたのと同時に、長友のサイドが簡単に攻め上がれる状態になっていることを見抜き、「佑都君があれだけ前に行けているなら、自分も前にいくという必要はないと思い、バランスを見ようと思った」という。 酒井と言えば、本田圭佑(ミラン)が「高徳はフィジカルが強く、1対1に強い」と言うように高い身体能力していることに加え、積極的な攻撃参加をモットーとする選手という印象が強かった。実際に酒井自身も昨年11月の時点で「FWみたいなことを言うようですが、僕の中でサイドバックはDFだけど守備だけじゃない。攻撃して活躍してなんぼ。世界を見ていてもそう思う」と話していた。 ところがアジア杯に入ってからは「DFなのでまずは守備から」と、言葉が変わった。「自分が行くことも大事だけど、行くことで前の選手のスペースを消すことにもなるので、そこは考えたい」と思考は変化していた。「自分が行った方がいいのかどうかを見極められるようになればいい」と、以前に比べて思慮深さが増しているのだ。 ザックジャパン時代は、W杯予選のような重要な試合で軽率な仕掛けや軽い守備をしてピンチを招くこともあったが、23歳になった今は、アピールが許される親善試合と結果が求められる公式戦で判断基準をしっかり分けられるようになった。これには近い位置でプレーしている本田や遠藤保仁も好感触を抱いている様子。本田は、「右サイドの連係は日に日に良くなっている。高徳には(内田)篤人とは違う良さがある。フィジカルもあるし、1対1に強い。もちろんまだ完璧ではないが、日に日に良くなっている」と言い、遠藤は「高徳は高い位置を取れるので、1対1をさせるなり、圭佑との絡みも含めてうまくサポートしてあげれれば相手の深いエリアまで入って行けると思う。自分とのコンビネーションに問題はないし、守備のときのバランスも特に問題なかった」と手応えを口にしていた。 酒井のパフォーマンスは、多くの選手が「グループリーグで最も警戒すべき相手」と話していたイラク戦でも安定したレベルを保った。パレスチナ戦では見せることのなかった、敵陣深くをえぐっての右クロスを上げた場面も2回あり、「パレスチナ戦よりアグレッシブにできたと思う」と胸を張っている。