ガザ3万人犠牲でも「仕方がない」? イスラエルの洗脳教育は〝成功〟なのか 日本在住40年、非戦論のイスラエル人が同胞の思考回路を分析した
ただ、イスラエルに対する批判は欧米諸国を中心にタブー視されているのが現実だ。苦言を呈するだけで「反ユダヤ主義」の烙印を押される恐れがある。「それはイスラエルがプロパガンダに大成功した例だ。ドイツはもちろん、ホロコーストで死亡した600万人のユダヤ人を助けなかったとして米国にもうまくつけ込み『あなたたちには責任がある』とあおり続けている」と指摘する。 ▽イスラエルの地図にないもの 最後に、イスラエルの学校で使っているという地図を見せてくれた。「この地図にはガザとの境界線はあるが、ヨルダン川西岸との境界線は描かれていない」。イスラエル以外で使われる地図では、イスラエルと西岸との間には第1次中東戦争の休戦協定で1949年に引かれた休戦ラインが描かれ、西岸にはパレスチナ自治区とイスラエル占領地が混在している。しかし、イスラエルで使っているという地図に休戦ラインはない。「西岸はイスラエルだという教育だ。イスラエル政府が意図的にやっている」
その上で「今回ガザで起きたパレスチナ人の爆発は、近いうちに西岸でも起きる」と警鐘を鳴らす。「西岸に住むパレスチナの若者たちも、抑圧の中で憎しみを育てている。このままパレスチナ国家が樹立されなければ大変なことになる。犠牲者は1200人ではすまない」。一部のイスラエル人はそうした認識を持っているが、大部分の人は「そのことを考えたくない。そこまで大きな問題ではないと思いたいのだ」と問題の根深さを指摘した。 【取材を終えて】 かつてナチス・ドイツによって強制収容所「ゲットー」に押し込まれたユダヤ人が、パレスチナ人をガザに押し込めて封鎖し、子どもが餓死する。ハマスにより国民1200人が殺された昨年10月の奇襲攻撃を「テロ」「第2ホロコースト」と呼びながら、その20倍以上のガザ住民を殺す行為を正当化する。そして、いまだに国民の半数以上が戦闘継続を支持する―。そうしたユダヤ系イスラエル人の思考回路について、ネフセタイさんは「洗脳教育」という強い言葉で説明してくれた。ユダヤ人以外では口にするのもはばかられるような厳しいイスラエル批判に納得させられるばかりだったが「自国の非を認めたがらず、近隣諸国を見下す。これは日本とも共通している」と矛先をこちらに向けられ、考えさせられた。故国を離れた愛国者だからこそ理解できる、とは言いたくない。国を離れずとも理解する努力が必要だ。