釣り人、魚料理店主、タワマン住民……それぞれの豊洲市場移転問題
結局、3時間ほど釣ってセイゴ4 匹、小さなチヌ1匹という釣果であった。このうち、30センチ級のセイゴとその半分ほどのセイゴ、チヌを、自宅に持ち帰り、調理した。大きなセイゴはムニエルに、小さい方は塩焼きで、チヌはカルパッチョに。付け合せは家庭菜園で育てたルッコラだ。……驚いた。塩焼きは確かに「例の味」が感じられ、完食はできなかったが、「即腹を下す」というレベルでは全くない。カルパッチョとムニエルに至っては、おそらく、ブラインドテストをしたら、高級フランス料理の素材だと言っても通るのではないか。「食べてみた」のブランクがあったせいで舌の感覚が鈍っているのかもしれないが、その後の体調に変化がないことも付け加えておく。 まあ、あくまで個人的な実験である。「食べられた」という予想外の結果が市場問題と何か関係があるとは言わない。でも、東京湾に親しんできた元都民の一人として、豊洲移転に対して、なんとなく気分的な踏ん切りがついたのは確かである。
---------------------------------------- ■内村コースケ(うちむら・こうすけ) 1970年生まれ。子供時代をビルマ(現ミャンマー)、カナダ、イギリスで過ごし、早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞(東京新聞)で記者とカメラマンをそれぞれ経験。フリーに転身後、愛犬と共に東京から八ヶ岳山麓に移住。「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、「犬」「田舎暮らし」「帰国子女」などをテーマに活動中