センバツ2023 3回戦 大阪桐蔭、守って8強 /大阪
第95回センバツ大会第9日の28日、大阪桐蔭は第1試合の3回戦で能代松陽(秋田)と対戦、投手戦を1―0で制した。勝利の瞬間、生徒や保護者ら約1100人が詰めかけた一塁側アルプスからは大歓声が上がった。準々決勝は29日の第3試合(午後1時半開始予定)で、東海大菅生(東京)と対戦する。【戸田紗友莉、山口一朗】 五回まで両校ともに無安打。両先発投手は一歩も譲らなかった。大阪桐蔭の南恒誠(3年)はピンチを背負いつつも、結局8回途中までで8奪三振、被安打3に抑えた。 均衡が破れたのは1死二、三塁のピンチをしのいだ直後の七回裏。先頭の4番・南川幸輝(同)は2球目、「待っていた」速球を強くたたき、打球は右翼深くへ。チーム2本目の安打は三塁打となり、南川は「(捕られずに)落ちてホッとした」という。 1死後、6番・村本勇海(同)が打席に入った。2球で追い込まれ、1ボール後、西谷浩一監督が出したサインは「3バントスクイズ」。村本は「まさか」と思い、三塁走者の南川も「ビックリした」というが、西谷監督は「最初からスクイズは考えた。あの場面は速球がくると思った」。その言葉通り、高めの速いボール球を村本が落ち着いて投前に転がし、貴重な1点を挙げた。 八回途中からは初戦で完投した前田悠伍(同)が登板、最終回には一塁手の佐藤夢樹(同)の好守も飛び出し、1点を守り切った。 チアリーダー部の石田芽衣さん(同)は「最初はヒヤヒヤしたが勝ってくれてうれしい。次の試合も全力を出し切って頑張って」と声援を送った。 ◇背中から力を ○…春夏の甲子園で3年半ぶりに声を出した応援が可能になった今大会。大阪桐蔭の大応援団は、約110人の吹奏楽部員がリードする。このうち日光に弱いなど、屋外で使わない方がいい楽器を担当する部員ら11人は、応援曲に合わせてプラカード約50枚を分担して掲げ、声援のタイミングを伝えている。攻撃中はグラウンドに背を向ける必要があるが、4月から3年生の江口禾柑(ののか)部長は「選手には背中から力を感じてほしい」。九回、守備の場面では1点差を守り切ったナインの姿を見届け、笑顔を見せた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇強気の投球「自分が」 南恒誠投手(3年) 両校無得点で迎えた七回表、相手先頭打者が三塁内野安打で出塁し、続いて四球。1死を奪ったところで伝令・松井弘樹(3年)からの「打たれてもいいから思い切って投げろ」の言葉を受けた。暴投で走者を進め二、三塁としてしまったが、持ち味の強気の投球で後続を三振、右飛にしとめた。「この場面は自分が投げきらないとこの試合は乗り越えられない」と思ったという。 中学では軟式野球部に所属。引退後、部活の仲間とグラウンドの隅で硬球に慣れる練習を始めた。大阪桐蔭入学後もなかなか感覚がつかめず不安だったが、その中で着実に力を付けた。昨春のセンバツ準々決勝では大量リードの九回に登板、無失点に抑えた。「得意なチェンジアップに頼っていた」と振り返り、この冬は直球を磨いた。 この日の先発は26日に言い渡された。「リズムがつくれるか不安だった」が初回を打者3人で終え、リズムに乗った。七回のピンチをしのいだ最後の球は力強いストレート。野球を始めた小学生の頃から憧れた夢舞台で、成長した姿を見せた。【戸田紗友莉】