国を動かした「付き添い入院」経験者3600人の声 任意のはずが入院条件に ルール違反のケア代替も発覚、こども家庭庁が医療機関の実態調査へ
幼い子どもが入院する際、保護者が病室に泊まり込んで世話をする「付き添い入院」を巡り、病児やその家族を支援する東京のNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」が6月、全国アンケートの結果を公表した。有効回答者は約3600人と過去に例のない大規模な調査で、本来は任意であるはずの付き添いが事実上、入院の条件となっていることや、保護者が心身ともに重い負担を強いられている状況を可視化する内容だった。 この調査結果を受け、こども家庭庁と厚生労働省は2023年度中に医療機関を対象とした実態調査を行うと発表した。アンケートに寄せられた親の声が国を動かした形だ。 「一日中ほとんど寝られない」「医療行為の代替を求められる」「経済的な負担がきょうだい児にも及んでいる」。当事者の声は、さまざまな面で深刻な問題が起きていることを物語っている。その一つ一つをたどりながら、子どもや保護者にとって最善の環境をつくるためにどんな手だてが必要なのかを考えた。(共同通信=禹誠美、山本大樹)
▽3食カップ麺、身を縮めて添い寝で仮眠 「親の人権がないと感じた。付き添いが必須ならせめてまともな環境を用意してほしい」。約2週間の付き添い入院を経験した関西地方の30代女性は、共同通信の取材にそう訴えた。 今年2月、女性の長男(4)は高熱に伴うけいれんを起こして近くの病院に入院した。付き添いについて病院側から希望を聞かれることはなかったという。「入院の条件かと思った。後から『制度上は任意』と知って驚いた」 病室を離れられるのは1日に15分だけ。保護者向けの食事提供はなし。長男の昼寝中に急いで院内のコンビニに食事を買いに行き、3食をカップラーメンでしのいだ日もあった。 長男が夜中に目を覚ますため、小児用ベッドの中で添い寝をして仮眠を取る毎日。入院から3日間はシャワーも浴びられなかった。4日目にようやく川崎病と診断され投薬を始めたところ、症状は軽快していったという。 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため保護者の交代は認められず、2週間のケアは「ワンオペ」で乗り切った。その分、自宅に残した1歳の長女の世話は自身の母親や夫に頼んだ。女性は付き添い中の体験を振り返り、「子どものそばにいられたのは良かったが、最低限の栄養が取れる食事を提供するなど、保護者にも配慮してほしかった」と語った。