国を動かした「付き添い入院」経験者3600人の声 任意のはずが入院条件に ルール違反のケア代替も発覚、こども家庭庁が医療機関の実態調査へ
保護者は24時間態勢で子どもに付きっきりになる。1日のうち、子どもの世話やケアに費やした時間は「21~24時間」との答えが最多で26%を占めた。睡眠や休憩はほとんど取れていないことになる。こうした生活を続けた結果、51%の人が付き添い中に体調を崩していた。体調を崩しても、病院でケアやサポートを受けられた人はわずか20%。自由記述では次のような声も寄せられた。 「交代できる人がおらず、自分の治療のために他の病院を受診後、戻って付き添いを続けた」 「精神が崩壊しそうになり、(病院側に)泣いて懇願して1日帰らせてもらったが、またすぐに行かなくてはならず、とてもつらかった」 ▽ルール違反の「医療的ケアの代替」も… 病院側との役割分担にも問題がある。回答者の大半は食事や入浴の介助など、入院中は本来、医療従事者らが果たすべき役割を担っていた。親が人工呼吸器の管理やインスリン注射といった医療的ケアに従事した事例も確認されている。「薬の管理から服薬までを親が担い、看護師がチェックする。過去に数回、薬の種類に漏れがあったが、責任の所在があいまいで、親が自責の念にかられた」という悲痛な訴えもあった。入院中の医療的ケアを親に委ねている状況は、厚労省通知に背く明らかなルール違反だろう。
経済的な影響も深刻だ。付き添い中は保護者の食費や洗濯、簡易ベッドの費用などで出費がかさむ。「経済的な不安を感じた」と回答した人は72%に上り、入院期間が長いほど不安を感じる傾向があった。長期入院の場合は仕事との両立が困難になり「正社員からパートになった」「退職を余儀なくされた」という保護者もいた。少しでも支出を節約しようと「きょうだいの学費や習い事をセーブした」という回答もあった。 ▽付き添い入院は「子どもの権利」 家族に過度な負担が生じているからといって、付き添い入院を全面的に廃止すれば良いというわけではない。子どもの回復や成長において親の存在は重要であり、親が子どものそばにいたいと思うのも自然なことだ。病児の福祉向上を目指す国際団体「病院のこどもヨーロッパ協会」は、その憲章の中で「病院にいる子どもたちは親または親の代わりとなる人に、いつでも付き添ってもらえる権利を有する」と明記している。