「イーロン・マスクを超える男」サム・アルトマンとは何者か? ChatGPT開発の舞台裏
AIと著作権
現時点でもAIにはいくつか問題を抱えています。そのうちの代表的なものは著作権に関わることです。もちろん著作権は創作者の利益を守るものであるとともに、創作を促すものであるため、人類の発展のために大切な権利だと考えられています。 著作権法の中では、フェアユースという考え方があります。例えば教育や研究目的の利用はフェアユースの範囲内と考えられています。AIによる学習がフェアユースの範囲なのか、また、AIが制作したものが元々の作品の利益を侵食しているかどうかも争点になりえます。 例えばアルトマンは、「(ChatGPTのような)生成AIが各種テキストなどのコンテンツを学習するのは、ちょうど我々人間が書物や新聞などを読んで学ぶのと同じことだ」と述べたそうです。一方で、各種クリエーターやニューヨークタイムズなどは「生成AIの学習はフェアユースではない」と考え、提訴をしています。 AIと著作権の問題は立場によっても捉え方が異なっています。特にAIが誰かの作品を無断で学習することが著作権侵害なのかどうかが、著作権者の利益とAIの進化のどちらが有利になるかを分けるポイントになっていくでしょう。
これからのAIの進化
AIの進化を導いたトロント大学のヒントン名誉教授は、気候変動を解決するように依頼されたAIが、気候変動の原因は人間と考え、人類を排除しなければならないと考えそれを実行に移す可能性について警鐘を鳴らしています。 このようにAIが人間の能力を超えるスーパーインテリジェンスとなった際には、私たちの人権をAIがどうとらえていくのか不確実だと言えます。 ケヴィン・ケリーがその著書『テクニウム』で語ったのは、テクノロジーの進化は生命システムのようであり、進化そのものを永続的に存在し成長させていくもので、止めることは不可能だろうということでした。また、テクノロジーのもたらす結果を予防することはできないため、自律共生できるように努力した方がよいとも主張されています。 民主主義と資本主義が強固なイデオロギーとなっている現代では、科学を退化させることはほぼ不可能で、我々はいつか人類を超えるような知性を目にすることになる可能性が高そうです。それがいつなのかはわかりません。もしかしたら人類の知性は今私たちが考えている以上に深淵なもので、AIに超えられるのはずっと先かもしれませんし、もうすでに超えられ始めているのかもしれません。 OpenAIは人の生活を革新するのか、危険にさらすのか、明らかになるのはもう少し先になります。ただ、OpenAIの手によらなくても、AIの発展はきっとどこかの会社が導いていくことになるでしょう。その未来がどんな人々や組織によって切り開かれていくのかは、本書を読めばより想像しやすくなるでしょう。AIの発展に興味がある方はぜひ押さえておきたい一冊です。
大賀康史(フライヤーCEO)