船井電機、出版社が買収以降300億円資金流出…破産申請時は117億円超の債務超過
破産手続きが開始された船井電機(大阪府大東市)を巡り、2021年に同社が出版会社に買収されて以降、約300億円の資金が流出し、破産申請時は117億円超の債務超過だったことが29日、読売新聞が入手した資料と東京商工リサーチ関西支社情報部の調査でわかった。簿外債務も判明するなど、破綻へとつながった不透明な資金実態の一部が浮き彫りになった。(杉山正樹、坂下結子) 【図】秀和による買収後の資金の流れ
準自己破産の申立人は、昨年3月に取締役に就任した創業家関係者の船井秀彦氏だった。前社長の上田智一氏(51)の退任以降、取締役会が開けず、運転資金にもめどがたたない状況となったことで、関係者らが混乱を避けようとしたとみられる。
10月24日付の破産手続開始申立書などによると、債権者は524人、負債額は計約474億円(簿価ベース)。この中で、上田氏がトップを務める出版会社「秀和システム」(東京)が21年5月に船井電機を買収によって子会社化して以降、多額の資金が流出し、資金繰りが悪化したと主張している。
この買収の際、秀和側がりそな銀行から借り入れた180億円は、船井電機の定期預金が担保とされ、今年5月、回収されていた。
上田氏は買収後、経営再建に向け、多角化を進める方針を示し、23年3月に船井電機・ホールディングス(HD)を設立し、持ち株会社制に移行。業容拡大を図り、23年4月に脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を買収した。この際、横浜幸銀信用組合(横浜市)から借り入れた33億円が簿外債務となった。ミュゼへの資金支援や関連会社への貸し付けなども行われていた。
こうした資金流出の結果、秀和による買収前に約347億円あった船井電機の現預金は「ほぼ尽きている」状況となり、保有する関係会社株式も相当程度が無価値となることも想定され、破産申し立ての理由となる「継続的に弁済することができない状態」となった。
事業面でも、主力のテレビ事業の不振で資金繰りが悪化する中、今年4月以降、営業利益は毎月3億~8億円の赤字が続いた。映像機器製造のタイの子会社は9月末の原材料の仕入れができず、操業を停止。今月からは在庫がなく、商品の納品が滞る状況に陥った。