「ルール守れない人は乗らないで」電動キックボードLUUPへの“厳しい目”強化の意図は? 事業者の苦渋と専門家の見解は
電動マイクロモビリティのシェアサービスを展開する株式会社Luupが、「春の全国交通安全運動」に合わせ、東京・SHIBUYA109渋谷店の店頭イベントスペースに「ルールやマナーを守らない人は、LUUPにも乗らないでください」と大きく書かれた啓発広告を掲出した。電動キックボードの利用違反者が増えており、SNSでも安全面や利用者のマナーについて様々な意見が散見される。批判的な目も向けられている中、同社がこのようなワードを使い広告を出した真意とは? 事業者であるLuupと交通工学が専門の東海大学・鈴木美緒准教授に、電動キックボードを巡る現状についてそれぞれの見解を聞いた。 【図説】車道?歩道?キックボードはどこを走るのが正解? 相次ぐ「怖い」「危なっかしい」の声
■「こんな広告ムダ」批判の声は想定内 “厳しい目”の喚起に期待
昨今、電動キックボードの危険走行に対する社会の目が厳しくなっており、令和6年度「春の全国交通安全運動」の推進要綱では「自転車・電動キックボード等利用時のヘルメット着用と交通ルールの遵守」が全国重点の1つに置かれた。前述の啓発広告はそのタイミングに合わせて利用者に注意を促した形だが、サービス事業者が「乗らないでください」と言い切るのは機会損失にもなりかねない異例の事態と言えるだろう。 一方でXには「そもそもルールを守らないやつには何を言っても届かない」「こんな広告ムダだ」といった辛辣な声もあった。Luup側はこのXの意見をどう受け止めるのか。 「それも一定の事実かもしれません。だからこそ今回の啓発広告は、LUUPで交通違反をする方々に対して厳しい目を向けていただきたい、そういった方々は厳しい目が向けられていることを自覚いただきたい、という思いを込めました。LUUPでは、電動キックボードの利用前には年齢確認書類の提出と警察庁監修の交通ルールテストの連続満点合格を義務付けており、LUUPユーザーの大半は正しくご利用いただいています。ところが一部の違反者がクローズアップされるがために、正しく利用している方が肩身の狭い思いをされているのではないか。社会からの厳しい目があるということを知っていただくことで、違反は減っていくのではないかと思います」(株式会社Luup・池上翔氏) 本来、事業者側が「厳しく見て」と宣言するのはあまり聞かない話だが、現状に鑑みるとそうせざるを得ない状況と言えるだろう。ただ、電動キックボードに限らず、どんな乗り物も最終的には乗る側の安全意識や倫理観に委ねられるところは大きい。それに対して事業者がどこまで責任を負うべきかは悩ましい問題だ。 「その前提はあれど、電動キックボードという新しい乗り物を扱う事業者として安全啓発の責任はあると感じています。さまざまな取り組みの中でも最も厳しいものとして、重大な交通違反をした利用者については把握次第、アカウント凍結の対応をしております。そうしたアカウントを増やさないためにも、ユーザー/非ユーザーがLUUPの間違った使い方を容認しない社会機運を醸成したい。それにより街の交通安全、ひいては電動マイクロモビリティへの理解へと繋げたいと考えています。その上で改めて、正しく利用されない方には『乗っていただきたくない』と強く訴えます」(株式会社Luup・池上翔氏)